片頭痛と心筋梗塞

 古来中国では、医師を上中下の三つに分類していました。病気を治す医師は下の医師、中の医師は病人を治すことができ、上の医師は社会を治すことができるとされます。だとすれば、病気を治せない医師は…?などと考えるのは野暮でしょう。私も時々経験しますが、例え個人的な病気の相談であっても、病気の背景にあるものを探り根本的治療を目指していると、ストレスやコミュニケーションの問題も解決に向かい、家族関係や職場の雰囲気も良好になってきます。このようになると、良好な雰囲気は再発防止に働きますので、好循環のサイクルが回り出すのです。「良い相談をしたなぁ」と思える瞬間です。

 逆に、病気ばかり視ていると重大なサインを見落とすことになるかもしれません。そんな報告がデンマークから入りました。片頭痛は比較的若い女性に多い病気です。若い、あるいは女性、というだけで心筋梗塞脳卒中のリスクは一般的には下がります。今回の報告は、そんな常識を裏切るような結果なのです。片頭痛と診断された方と条件的にほぼ一致する片頭痛のない一般人を約20年追跡したところ、片頭痛の人の方が心筋梗塞脳梗塞脳出血静脈血栓塞栓症になりやすかったのです。心筋梗塞で1.5倍、脳梗塞で2.3倍、脳出血で1.9倍、静脈血栓塞栓症で1.6倍と、約2倍の違いがあるわけです。

 さて、この結果が日本人に当てはまるとしたら、どのように活かせばいいのでしょうか?片頭痛の原因については諸説あるものの血管神経説が有力です。それによると片頭痛発作の前に一時的な血管収縮があり、その後に反射的な血管拡張が起こり神経を刺激するというものです。血管の収縮と拡張という変化を繰り返すことで、血管に何らかのストレスを与えていると考えられます。この血管ストレスにより動脈硬化が進行し心筋梗塞脳梗塞脳出血などの脳卒中につながるのでしょう。本来なら女性ホルモンの働きで男性よりも動脈硬化を起こしにくい年齢層の女性が約2倍も動脈硬化性疾患になりやすいのですから、血管ストレスの影響はかなり大きいものと想像できます。

 片頭痛は日常生活にも大きな影響がある疾患ですから、頭痛の痛みを取るだけでなく、頭痛発作を如何に抑えるか、発作頻度を如何に下げるか、ということも併せて考えていかねばなりません。そのために、当薬局では頭痛日誌を記入してもらうようにしています。発作を起こしやすいパターンを認識することで予防策が取りやすくなります。また、東洋医学的な体質把握により生活スタイルを改善することで、頭痛の頻度が下がる可能性もあります。食生活の見直しが役立つ場合も珍しくありません。

 その上で、血管ストレスを下げるような対策を考えたいものです。動脈硬化のリスクとなる高血圧・糖尿病・脂質異常などがあれば是正することが最優先でしょう。肥満や腸内細菌叢も動脈硬化との関連が指摘されています。タバコはもってのほかですね。まずは、生活習慣の見直しを行い、必要なら積極的な予防策を取りたいものです。動脈硬化の進行防止を考えるなら、酸化ストレス・活性酸素対策は最重要事項です。抗酸化作用のあるビタミン剤・食物などを積極的に取りたいものです。これらは血管内皮機能を正常に保ち血管保護的に働きますので、動脈硬化の進行防止に有用なのです。

 食生活は今までのスタイルを大きく変えると長続きしないので、ストレスを感じない程度に変更すると良いでしょう。始めは大変かも知れませんが続けることで大きな効果が得られるはずですし、家族のいる方なら家族の病気予防にも役立つのです。小さいお子さんのいる女性なら、子供に良い食習慣を身につけさせる絶好のチャンスです。大切なお子さんの将来の健康作りに大きく寄与すること間違いありません。

 このブログで私もちょっと上医に近づいたでしょうかね。


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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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