心臓死を予防する薬剤

自身の体力低下も省みず、今晩夜行で明日の東京でのトラウマティック・ストレス学会に向かいます。明後日は日本薬剤師会の薬局製剤漢方委員会に出席し、途中で失礼して大急ぎで戻り長岡市健康課の”こころの健康づくり”会議に少し遅れて参加する予定です。


バタバタした毎日を送っていますが、私の受けている相談には、相談者本人だけでなく家族の方の人生も左右するケースがあります。今も数人はいるので、最新の情報も含めて技術を高め続けなくてはと考えています。どの相談も真剣なのですが、特に時間に限りがあるケースでは常にベストの方法を求めているのです。


さて昨日出席した学術講演会。津南町立津南病院・石川眞一郎先生の「心臓死予防から見たACE阻害薬の有用性」と題した講演でした。


5〜6種類ほどある高血圧治療薬(降圧薬)の中では、降圧効果も弱く副作用としての咳の発生もあり、使用頻度が少なくなっているACE阻害薬。近年はARBと呼ばれる同系統の薬剤に押され気味なのですが、多くの研究データを詳しく分析した解説により、心臓死を予防する効果に優れていることは間違いないでしょう。


今年発表された”高血圧治療ガイドライン2009”でも軽い扱いなのですが、これには製薬メーカーの思惑がタップリ入っています。なぜなら価格の安いACE阻害薬より、高薬価のARBが売れた方が利益が上がるからなのです。最近の研究はほとんど高薬価の薬剤を使っており、その結果を活かせば高薬価の薬剤が推奨される構図ですね。


ですから臨床家には、そのような背景を考慮してデータを読む能力が要求されるのでしょう。その後の懇親会で数名の医師と話をしましたが、どんな内容の講演(企業主催・学会主催に関わらず)でも背景を含めて検討し臨床にどのように使うか考えなくてはなりません。恐らく我々薬剤師に一番欠けている能力なのではないでしょうか。


さて、懇親会で循環器を専門とする病院の医師がACE阻害薬はいい薬だと言っていたのは臨床的に使った手ごたえからなのでしょうね。この医師なら安心して心臓を診てもらえると思っています。


薬局で使う薬の多くは比較的薬価の安い薬剤が多いのですが、臨床上とてもいい薬があります。日本の薬価制度の欠点はいい薬が安くなり過ぎて、メーカーが製造しても利益が出ず製造中止になる薬があることです。


そしていい薬でも安いためにエビデンスで評価を受けるような研究に使われないのが現実です。現在のエビデンス偏重の医療界の問題点ですね。よい薬・よい医療には、きちんとした評価がされるべきだと考えさせられました。

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