心も治す漢方相談

今年も残りわずかですね。振り返れば、たくさんの出会い・御縁がありました。「世の中のたくさんの出会いの中で最もいい出会いとは、再会です。」とは、BSフジで放送されていた”BARレモンハート”の中のセリフです。何年も前に相談に来てくれていた人が久しぶりに相談に来てくれたり、中断したまま気にかけていた人が突然現れたり、そのような嬉しい出会いがありました。一方、悲しい別れも当然あります。私の力及ばず他界された方、引っ越しなどで通えなくなった方、反対に漢方薬心理療法が効き相談を卒業された方、出会いと共に別れもたくさんありました。誰か思い出せませんが、「出会いが御縁なら、別れも御縁です。」と言った方もいます。なるほど!

さて、漢方医学と現代医学の優劣をつけるつもりはありませんが、現代医学が病気の本質に迫れば迫るほど病人を癒す治療から離れる矛盾はどうしようもありません。そのことから心と身体を切り離さない漢方が見直され、心身医療・心療内科が注目され、また総合診療がクローズアップされてきています。病気が治っても病人が癒えていない状況があり、満足できない患者さんの一部が薬局に相談に訪れています。薬局だけでなく、整骨院や整体・カイロ、健康食品店(怪しい商売も多々ある現状は問題です)、果ては宗教・祈祷にまで、拡がっています。不幸にして亡くなった命を「御縁が無かった」では済ませられないですよね。

アトピー性皮膚炎を例にすれば、まずは皮膚の改善・痒みの解消ができなくては始まりません。皮膚科的標準治療では充分なステロイド外用剤を中心にしますが、誤解や過去のトラウマなどから不安が広がっていることが問題として挙げれます。医療者としては丁寧な説明が必要ですが、一方的な説明(説得調)では満足する筈かありません。ここがアトピービジネスの標的となる部分です。この時点で漢方相談に来る方もいるので全てダメとは言いませんが、ステロイドを使用する標準治療のメリット・デメリットと漢方薬によるメリット・デメリットを説明して納得してもらうところから相談はスタートします。

理論通りに皮膚状態・痒みともに改善したとしたら、薬を止める方向に検討する必要があります。本当の意味での回復・治癒とは、薬を使用しなくても再発しない状態ですから、ここをゴールとすれば《木を見て森を見ず》的な治療法だけでは片手落ちで、再発の火種を消さなくてはなりません。人によって火種は異なるでしょうから、スキンケア・食事内容・ストレス・・・などを見直すことが重要です。私がここに注目する理由は、標準治療のステロイド外用も週に数回使用するプロアクティブ療法というアフターケアを必要とし、それを早く卒業するためにはアトピー性皮膚炎を発生させる要因の改善がポイントだと考えるからです。

近年のトピックスで言えば、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と腸内細菌叢(腸内フローラ)の関係に注目したくなります。腸内細菌叢はプロバイオティクスとして乳酸菌製剤やヨーグルトなどを摂取する方法で改善できるものの、数種類の善玉菌を補給するより大切なことは腸内細菌の多様性だと言われてますから、腸内細菌のエサとなる食物繊維を多種類摂取することが更に重要です。そうすると食事内容に注目することになります。またストレスで下痢や便秘になった経験があるように、ストレスによって腸内細菌バランスも変化しますから、ストレスとの上手な付き合い方を身に付けることも大切です。他にも、口腔衛生と腸内細菌叢の関係もありますし、腸内細菌叢を考えるだけでも多くの改善点が見つかって来るのです。ちなみに、漢方薬の効果の一部には腸内細菌叢の変化が関係するとされています。

私のこの視点は、病気になる人と病気にならない人の日常生活の違いに着目する健康生成論から得ています。漢方では「医食同源」なる言葉がありますが、病気に源を辿れば食にあり着くわけです。人によってはコミュニケーションの改善が必要なこともあるでしょう。その時に漢方しか知らないのでは漢方薬からの卒業は遅くなります。いろいろなご縁があって巡り合った心身医療・心療内科の知恵も動員しながら、私の相談は進むようになりました。漢方でできること・薬が必要な部分は、決して多くは無いと考えるようになってきたのです。恐らく忙しいと、ここまで丁寧な相談はできないでしょう。かくして医療は薬漬け中心に進むことになってしまったと考えます。目の前の火を消すことだけで精一杯で火種を探して消していく余裕など無いのが現状です。

今、私が多くの病気に共通する火種として重要視するものがいくつかあります。食事や栄養・口腔衛生・身体活動(運動)・睡眠や休養・生活リズム・コミュニケーションなどです。どれも当たり前なのですが、悪い習慣ならば長期間かかって体を蝕みます。表面だけ繕ってもダメなことは明らかですね。「わかりやすいEBNと栄養疫学(佐々木敏著:同文書院)」には食塩摂取量が1日15g(少し塩からいと感じる量)の人と1日8g(少し味気ないが不可能ではない薄味)の人を比較すると、20歳では同じ血圧でも60歳になると一方を150mmHgと134mmHgもの開きが生ずると記してあります。一人は高血圧の治療が必要、もう一人は治療の必要無しで、あくまでも計算の上ですが現実には高血圧になる人は他の病気も合併しやすいことが知られてますから、血圧だけの問題では済まされません。さらに重要なことは子供のころから濃い味に慣れると更に影響は大きいと言うことです。

増大するばかりの医療費を抑制しようと厚労省は、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を推進しようとしています。上手くいくかわかりませんが、政策が机上の絵空事なら失敗するでしょうし、一般住民の意見を反映したものなら成功するでしょう。でも私には、一般住民の意見を反映しているとは思えません。薬局薬剤師が相談業務を捨てて、ドラッグストアでの薄利多売や調剤薬局での処方調剤に片寄った結果、相談能力のある薬剤師も地域から消えてゆきました。今わずかに残っているのは、漢方相談など特殊な知識を有している一部の薬剤師が中心です。それも保険医療に相談者を取られ絶滅危惧種状態ではないでしょうか。薬剤師に相談しても解決できなければ、医療費抑制につながりません。解決能力のある薬剤師が増えてくれることを期待したいものです。

我が相談を振り返ってみれば立派なことは言えませんが、それでも少しは役に立っているかと年末くらいは褒めてもいいでしょうか。病気を多方面から視ることで根本的な解決策を提供するようにしたいと考えています。でも独りよがりにならないよう学会や研究会で発表し、医師などプロの目で評価してもらうよう努めています。本来なら論文として記録に残すのが一番なのはわかっているのですが、日頃の雑務に紛れてできておりません。出来るだけ早い時期にまとめて論文化したいと思っています。

今年最後のブログです。一年間よきご縁をありがとうございました。



漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局
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