疲れと慢性疲労症候群

今、名古屋駅前のデニーズにいます。毎年恒例の漢方合宿に参加するためにきました。日本海側と違って、青空が普通に拝めるのは羨ましい感じです。ただ、今年は私の済む長岡も平野部では積雪は無く、この時季にしては珍しく(ことなのでしょうね?今後も温暖化で当たり前になったりして・・・)、スニーカーできました。例年ならブーツにするのですが(長岡では長靴の方が便利ですけど、さすがに雪のないところを長靴では歩けません)今年はいったいどうなっていることやら。

今回の勉強の目的は、私なりに《疲れ・疲労・慢性疲労》を整理するためです。漢方合宿なので漢方的な視点が中心ですが、薬剤師だけでなく医師も多数参加され現代医学的な視点も併せて、総合的な視点からの検討が期待できます。そのための発表資料作成にいろいろ苦労し、昨日ようやく完成しました。満点ではないものの70点くらいにはなっているのではないでしょうか。

さて、疲労は長い間乳酸の蓄積が原因だとされてきました。少し前に、この考え方は誤りだとされてますが、未だに医療者の中にも乳酸原因説を唱えている人がいます。残念ながら薬局薬剤師にも多いですよね。近年の考え方では、乳酸は疲労の原因と言うよりも疲労を回復させる物質とされています。ですから乳酸が多く溜まっている部位ほど疲労が激しい部位だと言うことができます。ただ、血行を良くして栄養と酸素を送り回復を早める点においては乳酸が原因であろうがなかろうが変わりません。

通常の回復力があれば、一晩身体を脳を休めれば回復します。これは異常ではなく、もちろん病気でもありません。問題は休んでも回復しない疲れ(慢性疲労)にあります。近代社会では労働環境の変化により過労死の問題があげられます。ヒトとしての回復力を超えた労働活動は、身体と精神に大きなダメージを与え、自然治癒力とでもいうべきバランスを崩してしまいます。その結果、身体的な調子を崩したり(多くは自律神経失調症の範囲だと思われます)精神のバランスを崩して不眠や対人トラブルやうつ病統合失調症などに発展しています。

「眠れていますか?」「美味しく食事はできていますか?」はうつ病の早期発見に有効なツールとされますが、慢性疲労や過労状態の発見ツールとしても有効なものです。なぜなら、これらの言葉によって、自律神経の乱れが確認できるようになっているのですから。自律神経の乱れが極端になると突然死の原因となるわけですね。漢方でも金匱要略と言う聖典に「虚労病」という慢性疲労について記載された箇所があり、心臓突然死になるような病態が紹介されています。

病気は、早期に発見して対処する方が簡単に治ります。現代医学的な視点で言えば、「いつもとちょっと違う感じ」が続いてきたら要注意!です。自律神経だけでなく免疫系やホルモン系のバランスが崩れてきているサインとなるからです。漢方的な見方で言えば、早期には自律神経系の異常と消化器系の異常がサインとして現れるとされます。この早期に異常かも?と気づけるかどうかが大切なのではないでしょうか?勤勉が美徳とされる日本ですが、先進国の中で自殺も多いのが日本です。何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、勤勉過ぎても良いことはありません。過労で倒れたりすれば結局周りに迷惑をかけるのですから。

では、慢性疲労症候群のような病気は特殊なのでしょうか?厚生労働省の研究班によると人口の0.1〜0.3%が慢性疲労症候群と推計されています。かなりの疲労を抱えながらも日本人の美徳ゆえか受診を考えない人が大半だそうで、まずは病気の概念をきちんと理解してもらうことが重要とされます。その上で、体内だけでなく脳内に起きている変化(慢性炎症・酸化ストレス・神経伝達物質の異常など)に着目した治療が必要となるのではないでしょうか。私が所属する日本心療内科学会でも報告があるように身体だけでなく精神的な部分も含めてトータルに診療することが求められます。治療を受けても半数は効果が無いとの結果から、身体的・精神的・東洋医学的な視点を総動員した総合診療が必要な疾患だと考えます。

さて、漢方を使うつかわないに関わらず、ターゲットが乳酸ではなく慢性炎症や酸化ストレスあるいはホメオスターシス(自律神経・免疫・内分泌系)にあるのですから、食事や生活リズムというものが非常に重要となります。バランス良い食事は、酸化ストレスや慢性炎症を抑えるような栄養素を多く含んでいますし、生活リズムの改善はホメオスターシスの維持に重要です。

その上で、私なりの可能性を挙げるなら、腸内環境も大事だと思うのです。最近の研究で、腸の健康が身体の健康や精神の健康と深く関係することがわかっています。おそらく、どんな高価な薬を使うよりも効果的なのかもしれません。

そんなことも含めて、発表してきます。そして、私がまだ気づいてない新たな視点が得られるといいなと思いながら。

                                       名古屋にて


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