来週から始まる大学での講義用テキストを、2日前にようやく完成させました。あくまでテキストなので講義するには他の資料も準備しなくてはならないのですが、とりあえず一段落です。漢方の勉強を本格的に始めて約25年、いろいろな本を読み、あれこれ試し、壁にぶち当たっては悩み、そんなことの繰り返しで今まで来ました。ここ数年、何とか安定した結果が出せるようになり(とは言っても、まだまだですが)、少しは若い方に伝えることもあるかと考え、講師の役を引き受けました。
結果が安定してきた理由として、《身体の治癒力を信じること》と《身体の中で何が起きているか(漢方的な病理)を考えること》が挙げられると思います。つまり、《身体が自ら治ろうとしている力を邪魔するもの》を如何に排除するのか?を、ほぼ全ての相談で考えることでしょうか。漢方相談だけでなく、皮膚病相談でも心理相談・カウンセリングでも、安定した結果が比較的短期間で得られるように感じています。今は未だ個人的な印象ですので、今後は理論的に説明できるようまとめるつもりです。
さて、中耳炎の多くは細菌感染が原因ですから基本的に抗生物質が使用されます。耐性菌が原因でもなければ通常は一般的な抗生物質で回復することがほとんどかと思います。しかし、徐々に耐性菌が増えている現在、また抗生物質による副作用報告の多い現状、などを考えると、抗生物質の使用は新たな指針作成が求められます。漢方相談をしていても、最後の切り札としての抗生物質は大切にしたいと思います。ウルトラマンで言えば必殺技のスペシウム光線が、あまりにも安易に使用されているような現状は、相手(病原性細菌)にすれば必殺技を防ぐ研究機会を与えているようなものですから。
それで、中耳炎だと相談してきたのは30代の女性。現在の治療状況などを確認したらインフルエンザ後の発症で38度台の高熱があり食欲も低下しているとのこと。普通なら受診を促して抗生物質を使用する状況でしょう。ところが抗生物質の副作用経験があり、診察時間も過ぎている時間で、仕方なく漢方薬で対応する旨を伝え、了解を得ました。一通りの確認の後、「妊娠の可能性は?」と、中耳炎とは関係ないものの、重要な質問をして、柴胡の入っている○○湯を飲んでもらうことにしました。予想される経過もお伝えして(経過が予想通りでなければ見立てに誤りがあった可能性も考えなくてはなりません)、帰宅したら早々に飲むようにアドバイス。
翌日には、無事解熱したことを確認でき、抗生物質代わりの○○湯に感謝。症状が無くなっても、体力の回復には時間がかかるから無理は禁物と諸注意を加えてひとまず終了。
このようなことも、身体の中で起こっていることが漢方薬を飲むことによってどんな変化をするのか、を考えながら相談にのっているのです。そして説明することで、納得して漢方薬などを飲んでもらえますし、生活上の注意も実行しやすくなります。誰だって自分の身体がどうなっているのか気になるものですから、難しい漢方用語で煙に巻くような説明ではいけないと、極力わかりやすい説明を心がけるようにしています。
同じ細菌性中耳炎でも慢性化した中耳炎では、漢方的黄な見立ても異なります。体温計すらなかった古代では、自覚症状と術者の他覚所見が情報でしたから、現れる症状が異なれば使用する漢方薬も異なるのです。現代的には細菌性だから抗生物質を使用するのでしょうが、細菌がいようがいまいが、今の身体反応(症状)により対応するしかありません。もちろん柴胡の入っている○○湯も使う可能性はありますし、桂枝の入った□□湯になるかもしれません。
ですから、細菌がいる慢性中耳炎と細菌がいない滲出性中耳炎でも、症状が同じなら同じ漢方薬を使うこともあります。漢方治療の原型が出来上がって約2000年の中国、漢方が伝来してから約400年の日本、どちらも抗生物質の無い時代を長期間送っています。身体の回復力を活かすこの知恵を後世に上手く伝えてゆきたいものです。
漢方薬・心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病・不妊症
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局 廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学非常勤講師)
http://hirohashi-pharma.sakura.ne.jp/ (アドレスを変更しました)
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