骨粗鬆症と突発性難聴

大学で漢方概論の講義を担当し、今ちょうど五臓の働きを解説しています。五臓とは、肝・心・脾・肺・腎の5つで、解剖学で言うところの肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓とは異なる概念です。しかし一部の機能は重なっているために、混乱の元になっているのですけれど・・・。でも、この五臓の働きが理解できると漢方の勉強は楽しくなりますし、いろいろ多彩な症状があっても意外に関連が見えてきたりするものです。この関連は現代医学では不明な点も多いのですが、少しずつ解明されてきている部分もあり、古代の名医たちの観察眼と経験の集積に感謝です。
この叡智は、後世にもきちんと残して行かねばなりませんね。

さて、私たち医療関係者に適宜送られてくるメールマガジンがあります。医療の最新情報に触れることができますし、今までの常識がひっくり返ることもあり、チェックしないと医療の進歩に遅れてしまう感さえあります。
そこで、最近送られてきた内容で私にとってはタイムリーな記事が「骨粗鬆症突発性難聴のリスクが1.76倍高い」という報告です。対象が台湾在住の人ですから、私たち日本人にも当てはまると考えられます。

突発性難聴は、時々相談を受けるのですが、ほとんどは治療した後の聴覚障害に対するものです。突発性難聴は発症早期の治療が大切と言われており、このタイミングを逃すと後遺症としての聴覚障害が残りやすいのです。ですから、仮に未受診の方が相談に来られたら、とにかく早急に耳鼻科を受診してもらうようにしています。
薬局に相談される方は、このタイミングを残念ながら逃したケースが多いのです。

何故、骨粗鬆症突発性難聴が関連するのでしょうか?報告では、心血管リスク因子・骨脱灰・炎症・内皮障害などが関係していると考察していますが、決定的な因子は不明なようです。しかし、ここに私がタイムリーと言った理由があります。
東洋医学では、五臓の腎は「骨を主る」とされ、腎の機能が骨の盛衰に関連すると考えています。また腎は「耳に開く」ともされ、腎の機能は耳の機能と関係が深いと言われてきました。

ちょうど今、この五臓の解説をしているところであり、何ともタイムリーなニュースが入ってきたなぁと一人でニヤニヤしているところです。臨床経験が皆無に等しい学生に、漢方概論という馴染みにくい学問を理解してもらうには、できるだけ身近な話題を取り混ぜながらすることで関心が高くなるような印象を受けます。
次回の講義は、「腎」の解説ですので、今回のニュースを上手く使ってみようと考えているところです。

この「腎」は、加齢現象や生殖機能も含んだ概念であることから、老化防止や不妊症などの漢方治療にも応用します。骨との関連で考えるなら、《骨粗鬆症⇒骨折⇒寝たきり・フレイル・・・》の流れを防止できるヒントが得られるように思います。例えば、ビタミンD濃度が高い人は、転倒や骨折が少ないことが知られていますから、積極的にビタミンDを摂取することで老化防止に有効なのではないかと考えられます。事実、高齢者の方が感染症のリスクが高いわけですが、ビタミンD濃度の高い人は感染症にかかる頻度が少ないとの報告もあり、腎臓は活性型ビタミンD3を生成することで感染症予防に関わってきます。感染症の観点からは「腎」の働きで若さを保てるのではないでしょうか。

当薬局では東洋医学的に「腎」が弱っているケースをよく経験します。若い人でも珍しくなく、若年発症の老化現象が増えているような印象です。ここで「未病」の考え方を多くの人に伝える必要があるでしょう。どうしても営業活動と繋がりやすく説明が難しいのですが、「腎」を保護するライフスタイルを中心に資料を作成したいと思います。出来上がったら配布します。
衰えた「腎」機能を補う漢方薬を「補腎薬」と言いますが、その前に大切なのは「保腎」ですね。



漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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