痛くて不快な間質性膀胱炎

「今日もすてきな1日だった」これは熊本地震で被災し亡くなられた大久保重義さんの日記に毎回書かれた文章です。新聞の記事を読んで、誰しも1日の終わりに大久保さんのような夜を迎えられたら心豊かな毎日が送れるような気がします。介護の世話にならない《健康寿命》を伸ばそうと厚生労働省も医療界も声高に叫んでいますが、私は更に《快適寿命》《自我寿命》を提唱したいと以前から考えています。

《快適寿命》とは単に介護の世話にならないだけでなく、美味しく飲食でき、痛みや痒みなどの不快な症状が無く、精神的にも肉体的にも充実した日々を送ることができる年齢のことを指します。日記の文章から、恐らく大久保さんはこのような人生を送ってきたのではないかと想像できます。
《自我寿命》とは、社会的なつながりから隔離されたような状態を指し、コミュニケーションが乏しい場合や誰からも心配すらされないような存在感のないケースなどで、その人の心のあり様に反映されます。しかし亡くなってからも身近な人を中心に何かと話題になるような方は、肉体的な寿命を迎えても《自我寿命》だけは生き続けていると私は考えているのです。大久保さんは「今日もすてきな1日だった」の言葉と共に今も生きていると思います。逆に清原被告は周囲に気にかけてくれる友人知人がいるにもかかわらず自分自身の《自我寿命》は終わったと勘違いし、薬物に手を出していったのではないでしょうか。でも彼の《自我寿命》もまだ終わっていませんよね。

さて、昨日は新潟薬科大学での最終講義を終え、新潟での学術講演会に参加してきました。「女性専門クリニックにおける女性泌尿器科専門外来の実際」と題したLUNA骨盤底トータルサポートクリニックの関口由紀先生の講演は、女性ならではの視点で色々なことが参考になりました。特に間質性膀胱炎に関しては理解が不十分だったと認識させられました。痛みや不快感が排尿問題とともに存在する間質性膀胱炎は、間違いなく《快適寿命》を短縮させますし、場合によってはうつ病などの原因になって自ら《自我寿命》を縮めることもあります。まだまだ世間的な認知の高くない疾患ですが、だからこそ医療人として積極的に向き合う必要があると考えます。

間質性膀胱炎は、何らかの原因により炎症が膀胱粘膜ではなく膀胱間質に起こっています。通常の細菌性膀胱炎と異なり抗生物質はほとんど効果がありません。そこで「気のせい」にされることも多くあり、治療法を求めてドクターショッピングを繰り返すようになります。私も、漢方薬を使うくらいしか選択肢の知識を持っていませんでしたし、その漢方薬でさえ東洋医学的に具体的なイメージが浮かんでないありさまでした。昨日の講演では、いろいろな治療法の選択肢があることを知り間質性膀胱炎治療の方向性がハッキリとイメージできるようになりました。

間質性膀胱炎は炎症がありますから、刺激はできるだけ弱い方がいいわけです。カフェインやアルコール、酸っぱい飲食物、過度な香辛料の使用、チョコやナッツ類、などは控えめにすることが重要です。そして細菌性の膀胱炎になりやすい人は、新たな炎症を加えないためにとにかく早く治療を開始することです。またトイレをギリギリまで我慢しないことも大切で、膀胱を優しく扱う気持ちがポイントと感じました。

他にも、間質の炎症抑制に抗アレルギー薬、膀胱粘膜強化に漢方薬、知覚過敏に抗うつ薬、・・・と盛りだくさんの選択肢にポリファーマシーのリスクも考える必要性も感じました。薬局での相談では健康保険は使えませんから極力費用負担を軽くするよう当薬局では努めています。最近は薬からの卒業にも積極的に取り組んでいる関係から、ポリファーマシーには敏感になっているかもしれません。でも、個人差はあれ誰にでも病気や体調不良を治す力はあると信じ日々工夫を重ねています。

ですから漢方薬を適切に選べば、膀胱粘膜強化だけでなく、間質の炎症抑制にも、知覚過敏にも、複数ではなく一つの漢方薬で対処できるはずです。あとは衣・食・住などの環境や生活習慣を改善する方向性を示し、慢性化や再発を予防することになります。
治療が難しい疾患との印象が強かった間質性膀胱炎ですが、薬局の相談でも希望を与えられるように思います。間質性膀胱炎で悩んでいる方でも、漢方薬という選択肢があることも忘れないで欲しいと思います。「今日もすてきな1日だった」と言えるように!


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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