長引く咳には、漢方薬

ヒトが”ガン患者”になるのは、いつからでしょう?ふと、こんな疑問が浮かびました。ほとんどのガンは、1個のガン細胞ができてから1cm程度の早期ガンになるまで10〜20年かかると言われています。早期でもガンと診断されると人は誰しも少なからぬ精神的ショックを受けることでしょう。そして、いかにも病人らしくなってしまいます。早期ガンでなく進行がんであっても、ガンと診断されるまでは普通に暮らしていた人が、ガンと診断されたとたん病人らしくなってしまう。恐らく10年以上ガンという病気は存在していたのに、徐々に体調の変化を感じていても、やはり多くの人は診断されてから”ガン患者”になっているのでしょう。だとしたら、診断・告知に対する受け止め方が変われば、ガンという病気を抱えていても”ガン患者”にならずに済むのかなぁ、などと考えている今日この頃です。個人的には、”ガン患者”という呼び方よりも”がんサバイバー”のほうが好きですね。


まだ台風関連のニュースからは目が離せませんが、確実に涼しくなってきています。季節の変わり目ということもあり、この頃より体調を崩す方が目立ってくるのです。特に呼吸器関係の症状で、発熱よりは咳がメインの相談が増えてきます。そして、この時期の咳は、治りにくく長引くことで多くの方を悩ませます。

咳はもともと肺や気管支に入り込もうとする異物を追い出すための防御反応ですから、むやみやたらに咳反射を抑えて咳を止める方法は好ましくありません。ですから、止めてよい咳と止めてはいけない咳があり、この見極めをするためにいろいろと確認させていただくわけです。止めてよい咳と判断できたら、咳反射を抑える薬(いわゆる鎮咳薬=咳止め)を使います。
しかし、止めてはいけない咳の可能性があるなら、その原因や病態を考えて、咳のタイプに合った適切な薬(一般的な鎮咳薬や去痰薬とは限りません)を選択します。ただし、長引く咳の原因として結核や肺ガンの可能性があれば、素早く呼吸器専門医へ紹介しなくてはなりません。

咳のタイプを考えるときに東洋医学的視点が役立つことがあります。一般的に、痰の有無により、乾性・湿性に大きく分け、乾性の場合にはアレルギー性のアトピー咳嗽や咳喘息が考えられます。アトピー咳嗽には抗ヒスタミン薬がよく効くことが知られていますが、欠点は乾燥を助長することです。乾燥が原因で咳反射が起きている病態なのですから、”潤す”方法を組み合わせたいものです。幸い漢方薬には潤す作用の薬があり、私の経験では、体質(東洋医学では証といいます)が合えば3〜5日くらいで咳は軽快します。
そして、喘息の一亜型といわれる咳喘息には抗ヒスタミン薬は無効で気管支拡張薬が効きます。喘息の一亜型と考えられていることから、気管支の炎症が何で起きたかを考えて対策を講じる必要もあります。エアコンのフィルターのカビやダニやハウスダストの可能性が高いと思われますので、住環境を見回してみましょう。ちなみに咳喘息のタイプにも効果的な漢方薬が何種類もあります。

湿性のタイプは、痰が比較的水っぽいタイプ、透明で少し粘り気のあるタイプ、着色した粘り気の強いタイプ、に概別できます。水っぽいタイプは、例えれば肺が溺れかけているような状況ですから、水を抜く働きの漢方薬を選択します。心不全ではこのタイプの咳が多くあり、咳止めを目的に飲んだ漢方薬で心臓の調子が良くなったと喜ばれたケースもありました。
粘り気が出てきた時は、水+熱のサインとして観ることが多くあります。この場合は、単純に水だけを抜こうとすると熱徴候が強くなり重症化する危険性がありますので、熱を冷ます作用(解熱剤は効きません)も組み合わせた漢方薬が必要です。
黄色や緑色に着色したタイプは、細菌感染の可能性を考慮しなければなりませんから、通常は抗生物質を処方してもらうケースになります。ただ、何かの理由で抗生物質が飲めないような場合でも、漢方薬が使えるケースがありますので、東洋医学の専門家に相談してみてください。

その他、逆流性食道炎など胃腸に問題がある(脾虚あるいは気逆)タイプ、冷えが関係するタイプ、疲労が関係するタイプ、精神的ストレス(気滞)が関係しているタイプ、・・・など、いろいろなタイプが存在しますし、それぞれのタイプに適した漢方薬も多数存在します。
そして、効果的な漢方薬が見つかったら、今度は各人に適切な生活アドバイスができますし、その生活スタイルは早期改善と再発防止に役立つのです。このように効果的なオーダーメードの生活アドバイスができることも東洋医学の大きな特徴ですね。



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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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