インフルエンザ脳症に備えて

歌手のASKAさんが再び逮捕されたと報道されていました。もっとも本人は否定しているようですが、客観的な証拠もあるようなので「ああ、またか」と思っている方の方が多いのではないでしょうか?覚せい剤大麻などの違法薬物は、一度でも使うと脳の報酬系での快楽記憶が強烈に記憶されるといいます。この反応は動物的ともいわれ理性だけで抑え込むのは困難とされます。ですからダルクなどの自助グループに属しながら意識を高く保ち続けることが重要なわけです。そして、動物的な欲求反応を改善するプログラムに「条件反射制御法」があり、有効性が確認されています。ただ、ダルクや条件反射制御法などのお世話にならないよう、最初の誘惑をかわしたいものですねよ。急に審議を始めたカジノ法案、とても心配してます。

さて、脳を破壊するという点では、インフルエンザ脳症も気になります。新潟県では鳥インフルエンザも確認され流行期に入ったインフルエンザとともに今後の動向に注意が必要です。過去の資料なども掘り返しつつ新しい情報と照らし合わせながら、整理してみました。
まず、インフルエンザ脳症はインフルエンザを発症してから神経症状が発現するまで、約1.4日と短いので疑ったら迅速な対応が必要となります。それは約30%といわれる高い致命率に加え、助かっても25%は後遺症を残すといわれているからです。

それで、予防できるのか?ということが重要な問題ですが、いくつかの可能性はあるものの絶対ではありません。インフルエンザ脳症が発生する仕組みすらハッキリ解明されてないので已むを得ませんが、このような状態だとデマやサギに近い情報も出回りますので注意が必要です。乳幼児や高齢者を中心にワクチン接種を済ませた方は多いと思いますが、インフルエンザの重症化を抑えることは出来てもインフルエンザ脳症までは残念ながら予防できないとされます。ただタミフルリレンザなどのノイラミニダーゼ阻害薬(抗インフルエンザ薬)の使用により、予防や重症化阻止の可能性があるかもしれません。詳しい説明は省きますが、インフルエンザウイルス感染による血管の損傷を抑える可能性があるとされます。

さらに高熱によりエネルギー代謝に影響が及び、脂肪の代謝がうまく行われなくなることも原因の一つと考えられています。また高熱により活性化された免疫反応も脳組織破壊に関係するといわれており、39度以上の発熱では解熱薬を使用する方が良いとされます。ここで発熱は身体の治癒反応なので解熱剤使用は逆効果との意見もありますが、やはり高すぎる発熱は過剰な免疫反応の現れであって結果として身体のダメージが大きくなるデメリットの面が目立ってきます。何事も適正な範囲があることを忘れてはいけません。ただ、この時の解熱剤として使用できるのはアセトアミノフェンのみで、アスピリンロキソニンボルタレンなどは逆にライ症候群のリスクとなるので避けなければいけません。

日本人の数%は高熱により脂肪代謝が悪くなる遺伝子を持っているようで、このタイプは食欲が落ちるとエネルギー源が不足し脳症を発症しやすくなると考えられてますので、消化のしやすい炭水化物(場合によっては砂糖水など)の摂取が有効かもしれないといわれます。
一部の専門家は、熱性けいれんとこの脂肪代謝に関係があるのではと考えているようですから、熱性けいれんを起こしたことがあれば、食欲低下にはくれぐれも注意したいものです。

さて進行が速いために、早めにサインに気づくことは非常に重要です。以下のようなサインがあれば早めに受診するようお勧めします。
 1.両親がわからない、いない人がいると言う(人を正しく認識できない)。
 2.自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものとを区別できない。
 3.アニメのキャラクター・象・ライオンなどが見える、など幻視・幻覚的訴えをする。
 4.意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない。
 5.おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情
 6.急に起こりだす、泣き出す、大声で歌いだす。

ところで私が専門とする漢方薬ではどうでしょうか?これもハッキリとデータがあるわけではありません。タミフルとのガチンコ勝負では、漢方薬の方が解熱時間が短かった(早く解熱した)との報告があります。インフルエンザ脳症の原因は高熱だけではありませんから、この報告をもって漢方薬が脳症を起こしにくいと結論付けできませんが、早く解熱したほうがリスクは少なくなると考えることは自然です。ただし、漢方に詳しい専門家でないと正しい漢方薬の選択はできないかもしれませんので、この点は強調したいと思います。また血管障害を考えればノイラミニダーゼ阻害薬の方がリスクを減らすとも考えられますから、インフルエンザ脳症に関しては引き分けというところでしょうか。
更に一言付け加えるならば、先ほどの報告ではタミフル漢方薬を併用した場合が一番解熱までの時間が長かったとのことです。安易な併用は慎まねばなりません。



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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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