『ガン性疼痛』と『こころの痛み』

「一隅を照らす」をテーマに奈良で開催された日本心療内科学会に参加して、有意義な時間を過ごしてきました。いろいろ収穫できましたし、今一つ掴みきれていなかった内容も腑に落ち、参加した甲斐がありました。以前から申しているように、私は「健康状態」や「自然治癒力」の基本(基礎部分)の一つに「姿勢」があると考えています。体の歪みや筋肉の偏った緊張状態が、身体のホメオスターシス(恒常性)を崩し自律神経や免疫系の乱れを生んで不調の原因になり得るのです。その改善策の一つとして「臨床動作法」の講演を聞いて、実際の効果やエッセンスを目の当たりにできたので、「姿勢の重要さ」が私個人の勝手な思い込みではなかったと確信できたのです。このような嬉しい発見がいくつかありましたので、今後は実際の相談にうまく生かして行きたいと考えているところです。

で、今回のテーマです。癌に限らず、根治の難しい病気や除かれない苦痛に繰り返し向き合うことは医療人として非常に辛いものがあります。出来れば、その話題に触れないで上手く避けられないかなどと考えることは特別ではありません(たぶん)。でも、例え自身の悩みが解決困難なものだと知っていても病人は医療人に寄り添って欲しいものなのです。ここに、医療を提供する側と受ける側のズレがあり、このズレは不満・不安・恐怖・怒り……などを生み、身体面では痛みなどとして表現されることも珍しくないようです。(想像形でしか書けないのは、私には一般論として書くほどの経験が少ないからですが、ターミナルケアに関わる医師などの話をもとに想像してますので、的外れではないと思います。)

ターミナルに関わらなくても、誰にも苦手な病人・患者・クライアントなどがいるはずで、私にも何人かの人が該当します。通常このような場合は、表面的な対応だけで済ませていたわけですが、相手にすれば失礼な対応だったなと思います。今までは、ただ相性の良い悪いとだけ考えていたのですが、以前心身医学の恩師である吾郷先生に相談した時「人格を磨きなさい。相性ではありません。」とのニュアンスで答えてもらっていたのです。もちろん意味が分かるような分からないような私にとっては哲学的な答えだったのです。

それが今回の心療内科学会で近畿大学の松岡先生の発表を聞いて、『人格』の意味が少しわかったように思います。この『人格』を心療内科では『治療的自己』と言っています。医薬品や手術などではなく医療者自身にも治療的効果が備わっているとの意味で使われており、『治療的自己』の高い人は当然少ない薬で短い期間に病人を治したり癒したりできますし、『治療的自己』の低い人は満足度の低い医療しか提供できないとされます。

「自分が苦手とする相談者・クライアントにどのように接したらいいのか?」の答えの一つを松岡先生は示してくれました。今までよりも効果的な提案ができると思っていますし、少しずつ実践しています。そう、とても実践しやすくなったとおもうのです。
で、松岡先生の発表から紹介しますと、ガン性疼痛で麻薬などの効果も充分でない患者さんに接し、とにかくその患者さんの話や訴えを聞いたそうです。ただ、それだけだったようですが、その効果は驚くべきもので痛みで苦しんでいた表情がとても穏やかに変わったとのことです。
「なるほどなぁ、治療的自己が発揮されたんだなぁ」と私は解釈しました。

「人はどうやって治ってゆくのか?」「治るとは?」これも、私が常に考えている命題ですが、私の治療的自己を高めることの重要性が解ったように思います。『治療的自己』という言葉に出会って10年近く経つと思うのですが、ようやくその一端を見たのが今回の心療内科学会でした。「一隅を照らした」ことで新たな可能性に気づくこともできましたし、どのように相談に活かすか工夫しながら「幸せづくり」を提供して行きたいと思います。


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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