機能性高体温症について

来週は、京都で開催される《アトピー性皮膚炎治療研究会》と《日本皮膚科心身医学会》に参加する予定でいます。年1回の会合ですが、個人的には非常に楽しみにしている学会・研究会の一つです。日本皮膚科心身医学会では以前発表したことがありますが、皮膚病相談は特に女性の場合には心理的配慮が欠かせないと感じています。これは皮膚科診療に携わる医師だけの問題ではなく、薬局薬剤師にも当てはまる一般的な問題ではないでしょうか。またアトピー性皮膚炎治療研究会には、ガイドライン通りに行かない治りにくいケースに対しての工夫が議論され、皮膚科的にも東洋医学的にも心身医療的にも興味深い研究会になっています。

さて、以前のことですが、機能性高体温症と思えるケースの相談がありました。この方の悩みはめまいだったので高体温に関しては不思議な現象程度の認識でしかなかったのですが、よくよく考えれば機能性高体温症の診断にも合致していると思われます。あまり聞きなれない病名ですので、この病気に詳しい九州大学の岡孝和先生の説明を借ります。

機能性高体温症は、13歳前後に発症のピークがあり女児に多く、小児においては原因不明の発熱の2割程度を占めるとされます。小児が発症した場合は、何らかのストレス下で40℃程度の高体温を一過性に生じることも多いようです。また、成人では微熱(37〜388℃程度)が持続するという主訴が多いそうです。そして様々な検査を行っても異常を認められず、一般的な解熱薬が効かないというのも特徴です。また医師の中でも認知度は低く、「10カ所ほどの医療機関を受診しても原因が特定されなかった」という機能性高体温症の患者もいるそうです。

原因として、患者の背景に何らかのストレスがあるようです。そのストレスが脳の視床下部に作用し、交感神経を活発にし褐色脂肪組織による熱産生が上昇して生じることが、岡先生らの研究により示唆されています。炎症反応がないために一般的な解熱薬が利かないのです。さらに、炎症反応があれば生じる眠気、倦怠感、食欲不振などの発熱に伴って一般的に見られる症状を示さないことも特徴です。ストレスが背景にあるため、片頭痛過敏性腸症候群、不眠、小児なら起立性調節障害を合併することが多いとされ、私のケースでも眩暈の相談に来られています。

当然ながら、ストレスを減らせればベストです。でも一般的にはストレスに対する適切な対処法を身につけてストレスの身体に対する影響を減らすということになります。この点では、心と身体をもともと一体のものとして考える東洋医学は機能性高体温症などの自律神経症状と相性が良いと考えられています。私の対応しためまいのケースでも、眩暈に対して漢方薬を使用し効果を上げておりますし、機能性高体温症と思われる手足の火照りも少なくなってゆきました。最終的には、ストレスとの上手な付き合い方を身につける必要がありますし、身体の反応は「もう頑張れないというサイン」として受け止めないと病状は良くならないばかりでなく悪化することも充分考えられるのです。

ストレス社会と言われる現代には、いろいろな体調変化が私たちを襲ってくると思われます。私ら医療人は心身医学の知識なくては充分な相談ができない時代に入っているのですね。私が東洋医学の世界を経て、心身医学の世界に入って来たのも、必然の流れだったのかもしれません。


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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