私の胆石奮闘記

 不測の事態に備え事前の準備をしていても、現実の結果は時として予想を裏切る結果をもたらすことがあります。昨今の自然災害は、過去の経験だけでは充分な対策にならないことを、私たちに伝えているようです。「線状降雨帯」これが自分の頭上に発生したら、土砂崩れと洪水の危険性が少ない場所に避難するのが賢明、このように結論付けできる事態が各地で起きたのが今年の梅雨の特徴ですね。当地はまだ梅雨明けしておらず、今年の危険が過ぎ去ったわけではありませんから、油断することなく気象情報をチェックしたいものです。

 そして、不測の事態は自然災害だけでなく、私たちの健康をも突然に(本当はジワジワと進行してきたものの当人にとっては「突然」なのです)脅かします。ただ過去を振り返ってみれば、サインは大抵あるはずなのですね。本人がただ気づかずにいただけ、あるいは気づいていても放置していた場合もあります。私も胆嚢に胆石があることを20年以上前から知っていたのですが、無症状だったのでそのまま放置していたら、今回何かの拍子に胆石の一つが胆嚢から飛び出し胆道を塞いだのです。1時間ほど苦しい状態があり、恐らくこの時は胆石が胆道を移動していたのでしょう。

 この移動した胆石が十二指腸への出口(乳頭部)から上手く出れば、辛い体験も一過性で終わったことでしょう。私の場合は、乳頭部で止まってしまい完全に胆道を塞いでしまったようです。塞いだ結果、出口を失った胆汁は逆流し、肝臓から血液に入ります。胆汁の色は大便の色の元で黄〜褐色をしています。全身に胆汁を含んだ血液が回れば全身は黄色く染まり黄疸となり、腎臓では尿から胆汁を出すので褐色の尿(ビリルビン尿)になるわけです。私の場合は、身体の異常事態をビリルビン尿で感じました。胆道を移動するときの辛い1時間は、宴会の途中だったので疲労とアルコールによる一時的な不調くらいに考えていたわけです。何よりも翌朝の回復具合で、そのように考えるのが自然だったのです。

 ただ、ビリルビン尿が出てからは身体はだるく体力的にはさほどハードでない薬局業務をこなすことも休み休み行う様でした。この時点では、不調の原因を胆石によるものと確信してましたから漢方薬を飲みながらなんとか排石を試みたものの15mm以上の胆石が排石されることは残念ながらありませんでした。1〜2日粘ったものの自力排石に至らず消化器専門の開業医を受診、胆石との診断で病院に紹介入院が決定しました。翌日からの入院に備え、相談の予約を振り替えたり、私が入院している間の不足する漢方薬を準備したり、出来る限りの対策を講じて病院へ。

 病院でのいろいろな検査の結果、悪性のものは発見されず胆石が原因の閉塞性黄疸との確定診断を頂き、内視鏡を使った摘出(ERCP)を行うことになりました。久々の(小学生の盲腸以来ですから約50年)入院生活は、少し厚めの本やパソコンなどを持ち込み日頃後回しにしてきた仕事を整理することに。胆石は一般的なコレステロール結石でしたが16mm×18mmと大きく、砕きながら取り出し一部は記念に頂き今後の話のタネにしようかと考えています。術後合併症もほとんどなく、主治医の技術には十分満足しています。ただ、大きな安心感は研修医による腹部の診察と看護師による腸音の聴診で、改めて『手当て』の重要性を身をもって感じています。

 胆石の摘出自体は大成功でしたが、意外にも血中ビリルビン値の下がりが悪く入院期間が延長と予想外の結果に、どうも私は胆汁の流れが悪い体質かと考えています。それならそれで対策を講じれば良いわけですから、定期的に利胆作用(胆汁の流れを良くする働き)のある薬剤を飲もうと考えます。また、入院期間中に気づいたことがあります。それは女性の病室からは良く会話が聞こえてくるのですが、男性の病室って会話が少ないんですね。まぁ想像できることでしたけど、日本男性のコミュニケーションの在り方は少し改善した方が良いように思います。定年を迎えた男性が粗大ゴミ扱いされないようにするには、若いうちに身につけておいた方が良いスキルの一つではないでしょうか。

 また、肝機能の数値を見て看護師さんの一人に「相当だるかったんじゃないの?」と言われたものの、私としては言われるほどには感じてなく、このことは私の内部感覚(身体に対する気づき)が鈍感な証拠かと受け止め、この感覚を磨くために日頃相談者に説明しているマインドフルネスを日課に加えようかと思います。この内部感覚あるいは内受容感覚に関しては心身医学でも注目されており、心身症の原因としてかなり重要なものと認識しています。それが私には欠けているようなので、胆石の診断以上にショックだったと言ってもオーバーではありません。

 ともあれ、いろいろと考えさせられたり、貴重な気づきを得られた、胆石騒動でした。
お世話になった皆様、ありがとうございました。


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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