頑固な痒みと肝臓病・腎臓病

 10年間に数回と言われる大寒波に覆われ、日本列島各地で混乱が生じています。また先日は群馬県草津白根山の突然の噴火など、自然は容赦なく私たちを襲ってくる存在であることを改めて認識させられる1週間でした。コントロールできない脅威に対しては油断せず過度に恐れることなく適度な距離感を保ちつつ”正しく怖がる”ことが重要です。その一方で、ある程度コントロール可能な脅威に対しては準備を怠らないようにすれば対処が可能です。まだ今年は始まったばかりですが、楽観的過ぎず悲観的にもならないよう自然体で生活を送りたいものです。

 さて、どんなに我慢強い人でも痛みと比べて痒みの辛さは耐え難いのではないでしょうか。一般的には、虫刺されや湿疹などの皮膚が赤く腫れる炎症反応が痒みの主体ですから、その炎症反応を抑える目的で抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬やステロイド剤が用いられます。そして、現実場面でこれらの薬は非常に良く効いてくれます。虫刺されや湿疹のような局所の病状でも、蕁麻疹のような全身性の病状でも、軟膏や点眼薬などの外用剤と内服薬(場合により注射薬)との違いはあっても、効果があることに間違いはありません。

 しかし、時に頑固な痒みを生じることがあります。例えば、肝硬変などの肝疾患や透析治療を含む腎臓病では、一般的な痒み治療の効果が薄いことが知られています。細菌では、痒みも痛みと同様に末梢性の痒みと中枢性の痒みがあるとされ、一般的な痒み治療は末梢性の痒みに効果があっても残念ながら中枢性の痒みにはほとんど効果が無いと考えられています。そして数年前からは中枢性の痒みに対する薬剤が医療現場で使用されるようになり、今まで我慢してきた患者さんに使用されているのです。

 ところで、なぜ肝臓病や腎臓病で中枢性の痒みが発生するのでしょうか?これに対しての明確な答えはまだ無いようですが、一つの仮説として血液やリンパ液などの体液の微妙な変化が中枢でのスイッチになっていると私は考えます。漢方相談を行っていると難治性の痒みに困って相談に来られる方がいます。今までの相談結果を振り返ると東洋医学的には、血熱や水滞の関与するケースが多く、これらは現代医学的には肝臓病や腎臓病とも共通しているために浮上した仮説です。

 また、アトピー性皮膚炎のように痒みがストレスなどの原因により難治化している場合もあり、血液やリンパ液などの変化とは別の作用で中枢性の痒みが生じるケースもあります。ストレス性の痒みに対しては、認知行動療法(特にACTやマインドフルネス認知療法などの新世代の認知行動療法)やナラティブセラピーや催眠療法などの心理療法が効果的と考えられます。

 もし中枢性の痒みが生じているのに末梢性の痒みに使用する治療法を行うだけなら、効果のほとんどない治療を続けることになりますし、場合により副作用という新たな問題を抱える可能性もあるわけです。漢方相談でも、効かない漢方薬を続けることは意味がないばかりか何らかの副作用が生じる可能性を考えて、むやみに長期間服用させることの無いよう私ら専門家は注意せねばならないと思います。

 今の私は、漢方相談と心理療法を適宜織り交ぜた”心療漢方相談”というスタイルでいろいろな病気や悩みと対峙しています。どちらにもある程度精通することで、多くの相談において今までよりも短期間で効果を上げることができるようになったと感じていますし、漢方薬の終了も早くなったと思います。でも、肝硬変や透析は病気としてかなり進行したステージですから、病気そのものが完全に治ることは期待できません。その意味でも早めに相談いただければと感じます。

 今週末は、日本皮膚科心身医学会に出席してきます。(天候が気がかりです)


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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