今日は東日本大震災の発生から丁度10年という節目の日です。「もう」か
「やっと」なのか、受け取り方は人それぞれでしょう。ただ、残念なことに
いまだ2000人以上の方が行方不明だという事実。心の整理をつけようにも
節のない中途半端な状態は、心の健康度を低下させます。「曖昧な喪失」と
名付けて活動している専門家もいます。健康度を保つには、人との対話が重要
ですので、孤立しないようコミュニティを維持してほしいと願います。
時々、土産品としてもらった中国製の漢方薬を見てくれと依頼されることが
あります。「漢方薬=安全」とのイメージがありますが、確か20年ほど前、
漢防已を含有する漢方薬で腎機能障害が出て、ちょっとした話題になりました。
防已を使用する漢方薬は数種類ありますが、日本国内で流通している防已と
中国で使用される防已(漢防已)は全くの別物なのです。中国製品には単に
防已と表示されているので、漢方薬に詳しくないと気づかないことでしょう。
そのように同じ生薬名なのに、別物というケースはたまにあります。
自分で購入したものなら自己責任となるでしょうが、自分の健康と引き換え
るだけの価値があるのか、よく考えていただきたいものです。最近は個人輸入
のサプリメントで同様の事例が増えているそうですので、ご注意を。
さて、腎臓の働きが低下し腎不全となれば、人工透析で老廃物を除去する
ようになります。現在は、糖尿病性腎症による人工透析が一番多く、多額の
医療費を必要とすることから、予防の重要性が注目されています。
糖尿病のような基礎疾患があれば、その治療が最優先課題です。高血圧も
同様ですね。この分野では現代医学的治療が効果的ですので、漢方薬を使う
とすれば副作用対策や不定愁訴対策となるでしょう。それでも腎血流を改善
するような漢方薬は、腎機能改善に有用です。
あるグループは、生薬の黄耆粉末により腎機能が改善したと報告しており、
注目されるものの黄耆の作用だけではなく、繊維質による効果も考慮する必要
があると私は考えています。その理由として医療用の活性炭が腎臓病に使用
され(ウレミックトキシンの吸着)、効果を上げている点が挙げられます。
腎臓の負担を軽減する漢方的な視点とすれば、汗を利用することもありだと
思いますし、大便をスムーズに排泄するのも同様です。その上で、科学的な
検証は今後の課題として、冷え対策もポイントでしょう。
薬とは無関係ですが、運動療法(腎臓リハビリテーション)も注目されて
います。運動習慣のある人の方が腎機能が良好に保たれるというデータが
示され、腎臓病=安静という従来の概念が訂正されています。
腎臓の負担を軽減するための非薬物療法は積極的に取り入れたいものです。
もちろん、できる範囲で構いませんが、薬を増やさず(身体の負担を軽減)に
その効果を最大限に引き出すことは、医食同源を謳う漢方薬の基本的精神に
つながるものと考えます。
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薬剤師・心理カウンセラー(公認心理師) 廣橋 義和
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