アトピー性皮膚炎は皮膚バリアがポイント

最近の気候の変動は春とはいえすごいですね。5月くらいの陽気の日もあれば1月2月にあっという間に逆戻り。体調管理が難しい頃ですが、規則正しい生活で乗り切りましょう。


昨日の講演会は、特別講演がダブルともったいないような講演会でした。『アレルギー性鼻炎を見直す〜進歩するスギ・ヒノキ科花粉症治療のピットホール〜』と題し三重大学耳鼻咽喉・頭頸部外科准教授湯田厚司先生が、『アトピー性皮膚炎の基本知識ー気道アレルギーとの接点ー』と題し日本大学医学部皮膚科学分野教授照井正先生が講演されました。


湯田先生は専門の免疫療法についての講演が印象に残りました。注射による免疫療法の効果を示され、漢方薬でも同様のデータが出るといいなと考えながら聞いていました。また注射の欠点を補った舌下免疫療法のデータも示され、研究中とはいえすばらしいデータでした。


私の仮説”杉製品との接触機会減少がスギアレルギーの増加と関連するのでは?”との質問にはすっぱり却下。スギの木材そのものには抗原性がないことが理由ですが、医心方という古書にスギの葉によるアレルギー改善方法が載っていることから抗原性の有無とは別の機序で関係しているのではないかと考えています。


照井先生は、皮膚(特に表皮)の構造や働き・バリア層の仕組みなどの基礎部分の説明から、バリア層の破壊がアトピー性皮膚炎発症の出発点であること、掻き壊すことが慢性化の原因となることなど、わかっていたものの改めて理解が進みました。


またフィラグリンというタンパク質が少なくなる遺伝子を持っていると慢性化していることを示され、スキンケアの重要さを説いていました。スキンケアというと皮膚の清潔が浮かび、石鹸の使用につながりますが、石鹸の使用も物理的なバリア破壊・抗菌的なバリア破壊を伴うことから慎重であるべきとの意見でした。


とかく最近は清潔志向が過剰気味でいろいろと問題があると思っていましたが、理論的な説明にモヤモヤした気分がすっきりしました。


喘息など他のアレルギー疾患との接点として、家ダニの糞に含まれる蛋白分解酵素が、皮膚のバリア層を破壊するだけでなく粘膜のバリア層も破壊するために気道アレルギーの原因になることなど、もう少しゆっくり話を聞きたいと思う内容でした。


最後の懇親会の席で、幾つかの疑問を照井先生にぶつけたところ「小児科の先生ですか?」と聞かれ「薬剤師です」と答えたら、かなり細かいことまで知っていることに驚かれたようで、今までの皮膚病の勉強の成果が認められたようで嬉しく思いました。


アトピー性皮膚炎は、難治性ですからバリア層のコントロールだけで上手くいくことは少ないのですが、やはり基本だと思います。それに加え、アレルギー免疫学的な視点、心身症としての視点などを加えることが重要かと思います。ストレスとの関係は深いですから心身医学的な視点は特に欠かすことが出来ないでしょうね。

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