天気痛と漢方薬

昨日今日とこの暑さは尋常ではありません。いったい雨雲はどこに行ったのだろうと気にしたところで涼しくなるわけないものの、冬の雪が恋しい私は勝手でしょうか?この暑さで熱中症で体調の悪化を来たした人が病院に搬送されるニュースが溢れています。水分補給だけでは体液は薄まるばかりで”水中毒”の危険すらあります。水分と塩分を一緒に摂るよう心がけてください。一方、手軽なイオン飲料には糖分も多く含まれていて、水分と塩分を補給できるものの糖尿病の発症も報告されてますので、摂り過ぎに注意ください。

私が”天気痛”なる言葉を知ったのは1〜2年くらい前かと思います。痛みはケガや病気に伴って異常を知らせるサインとして発せられます(末梢性)。ところが慢性の痛みになると、異常のサインとしてよりも中枢の誤作動としての色彩が強くなってきます(中枢性あるいは神経性)。ですから「傷は治っているのに傷む」とか「夜になると傷む」とか「天気が崩れると傷む」・・・となるわけです。

急性期の痛みは、たいていは末梢性で鎮痛薬(いわゆる痛み止め)がよく効きます。いや、普通は効くはずです。ところが慢性期の痛みは、痛みの発生原因が急性期とは異なりますので、鎮痛薬の効果があまり期待できません。効かないから薬の量が増えたり、別の痛み止めを求めて医療機関を変えたり(ドクターショッピングと言います)、怪しげな民間療法や詐欺商法に引っかかったりします。中には、宗教の熱心な信者になる方もいます。

このような鎮痛薬の効かない慢性期の痛みに対し、最近は認知行動療法などの心理療法が有効との報告が増えてきています。これは脳の誤作動による痛みの増強を正すことで効果を表すと考えられています。例えば、本来の痛みの強さは10段階評価で2のレベルの人が、「また痛くなったらどうしよう」とか「この痛みで何もできなくなった」とか「人と会いたくない」などと考えていると、本来は2のレベルなのに7にも8にも感じられるようになります。7や8のレベルだから「やっぱり何もできない」などと受け止め、更に痛みが増幅する悪循環に陥ります。アリ地獄のような世界ですね。専門的には《破局的思考》などと言いますが、この思考の悪循環を断ち切るのに認知行動療法などの心理療法を使うわけです。私は、痛みではないものの痒みで悩んでいた引きこもりの人に、認知行動療法だけでなく色々なテクニックを駆使して社会復帰させたことがあります。増幅されようが本人にとっては強い痛みを感じているので、時間をかけて修正するようなイメージになりますが、薬を使わずに改善することも可能だと知った貴重な体験でした。

これとは別に、気圧の変化や気温の変化などにより誤作動を起こすこともわかってきました。これが”天気痛”と言われる痛みの正体です。誤作動する場所は耳の奥にある身体のバランスを感知する器官(三半規管)で、乗り物酔いやめまいと関係が深い器官です。ですから、この天気痛には乗り物酔いの薬が使われるそうです。どの程度の有効率かはわかりませんが、頑固な慢性痛が乗り物酔いの薬で軽くなるとしたら嬉しいですよね。

ただ、この乗り物酔いの薬に一般的に使われる抗ヒスタミン薬には、眠気や喉の渇きなどの副作用があったり、集中力低下や眼圧上昇などもあり、誰でも飲めるものではありません。乗り物に乗る時の一時的な使用とはわけが違いますから、やはり副作用も含めて慎重に使用したいものです。そこで漢方薬にも出番があると考えています。めまいや乗り物酔いに使う漢方薬には主なもので数種類あり、多くは痛みの原因の水滞にも有効なことから一石二鳥だと考えます。具体的な漢方薬名は行政指導もあり書き込めませんが、体質に合った漢方薬を選ぶためにもぜひ専門の漢方家に相談してみてください。

そして、本物の漢方家なら、日頃の養生も含めて、個々にオーダーメードされた指導・アドバイスをしてくれるはずです。そのアドバイスを実施すれば、たぶん漢方薬を飲まなくても快適な生活が送れるようになると信じています。梅雨後半らしからぬ猛暑の日本列島ですが、今後の天気の変化に注意され、少しでも穏やかな生活となるよう願っています。

通常の治療(鎮痛薬や理学療法など)で改善しない慢性の痛みに対し、認知行動療法などの心理療法と漢方相談があることを頭の片隅に置いておいてください。何かあったら、いつでもご相談を!



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