止めてよい下痢、止めてはいけない下痢

東洋心身医学会への論文提出を3日ほど前に終え、ちょっと気分的に楽々しています。しかし、県薬に提出する漢方コラムと日薬の委員会の課題もあり、今度はその仕事に取り掛からねばなりません。まぁ適当に頑張ります。
さてちょっと気になるニュースがあります。岩手県の中2生が自殺した件です。亡くなった生徒の担任の対応に焦点が当てられているようです。少しややこしい表現になりますが、原因探しは必要と思うものの単なる犯人探しは問題解決にならないと考えています。亡くなった生徒の遺族と同様に担任教諭だって相当の悲しみを抱えているはずですから傷に塩を塗るようなことにならないよう注意したいものです。亡くなった生徒さんの冥福を祈ると共に同級生など関係者の心のケアに思いを寄せたいものです。

さて、昨今薬局において下痢の相談はめっきり少なくなったように感じています。普通に急性の下痢であれば様子を見て終わることも多い(たいていの場合で薬を飲んでも飲まなくても結果に大きな違いはないように感じます)と思いますし、慢性の下痢であれば医療機関にかかって治療を受けていると思いますし、相談薬局の出番はあまりないのかなと考えています。ほとんど相談が無ければ勉強する必要が無いとも言えないわけで比較的頻度の多い症状ですからスタンバイは必要です。

そこで食中毒の時期でもあり下痢の話題を。一般的に急性の下痢であれば下痢止めを安易に飲むと逆に悪化させたり回復を遅らせたりすることになります。この場合の原因は大腸菌サルモネラ菌カンピロバクターなどの細菌類のことが多く、これらの細菌や細菌毒素を排出する防御反応としての下痢のため止めてはいけないわけです。このような時は大抵思い当たる食品があるはずですから1〜2日の食事内容を確認すると良いでしょう。その上での対応ですが、下痢により水分とミネラルが失われますので、脱水対策がベストの対応となります。今の時期は予想以上に汗にならない汗をかいていますから脱水症状になりやすいと考えましょう。

慢性の下痢は、ストレスが関係する過敏性腸症候群クローン病潰瘍性大腸炎などの自己免疫性疾患、膵臓や肝臓に原因がある消化器性のげりなどがあります。慢性の下痢は、医療機関にかかっていることも多いと思いますが、急性下痢症と異なり原因も多岐にわたり複雑になりますから多方面からのアプローチで総合的に取り組みたいものです。

例えば、漢方の視点を入れるだけでも違うと思われ、食品の寒・熱の性質を考えて献立をたてるだけでも調子が変わると思います。また、栄養学的な視点を積極的に入れたり、乳酸菌・酪酸菌などによる腸内細菌叢への働きかけを加えたり、ストレスへの上手な対応の仕方を身に付けるなど、どれも重要と考えます。
近頃のトピックスとしては、腸内細菌と免疫系やガン・生活習慣病などの関係も注目されており、治りにくい下痢症(Cディフィシルなど)に対し他人の便(腸内細菌)を移植する便移植が効果を上げています。

腸内細菌叢を考えれば、乳酸菌や酪酸菌などの整腸剤を補給したり、その栄養源となる食品を摂取したり、また口腔衛生を保つことで間接的に腸内細菌叢を良好に保つことも重要と思います。

この1ヶ月に経験したケースでも、止めるか止めないかを状況から考え、漢方薬を2〜3日使い、仕上げは栄養剤としました。何もせず様子を見るだけで終わった方もいます。これからは冷たいものや水分の過量摂取で下痢になりやすいと思います。くれぐれも食中毒には注意していただきたいと考えています。そしてそのために、食中毒菌や悪玉菌の侵入に対し柔軟で強固に対応できる腸内細菌バランスが重要と思うのですが、多様な細菌叢がポイントと考えています。発酵製品や整腸剤も種類を限らずに多数摂取することを進めています。



漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局
http://hirohashi-pharma.sakura.ne.jp/ (アドレスを変更しました)

過去のブログの主なものはホームページにリンクを貼ってありますから、見たい記事がありましたら《ひろはし薬局のホームページ→過去のブロ
グ》から探してみてください。(現在の更新はしてませんが・・・)
  あるいは⇒http://www3.ocn.ne.jp/~hirohasi/sub6.htm

メールは《Re:タイトル》でお願いします。メールマガジンの申込も随時受付中
     ⇒8hirohashi@gmail.com

薬事法の関係で、具体的な薬品名は表示を控えています。お知りになりたい場合は、直接ご連絡ください。

講演の依頼に関しては、ホームページに掲載してある講演内容を参考にして、お申込下さい