腸の環境と免疫疾患

先ほど、冬の到来を告げる雷が鳴ったかと思ったら、あられが降って一時的に地面が真っ白になりました。いよいよ本格的な冬に突入するのですね。気を引き締めて、事故・ケガ・病気と無縁な生活を送りましょう。
先週末に盛岡で開催された日本心療内科学会学術大会、20回の節目となる大会にふさわしい内容だったと思っており、未だに余韻に浸っております。使用薬を減らして本当の治癒に導くために心身医学のテクニックを用いること、心身医学・心療内科学の神髄に改めて触れられた大会でした。一方、手間をかけるわりに収益などの評価が低い現状は、継続性に不安があります。
ただ、心身医療にしても漢方相談にしても、医療人としての目指すゴールは治療の終了(薬ゼロなど)なので、私の取り組む相談スタイルがさらに明確になりました。実際に、心身医療と漢方相談を融合した形の心療漢方相談(私の勝手な造語ですが気に入ってます)スタイルが出来上がるにつれ治療効果も上がってきています。今後は益々このスタイルに磨きをかけてゆきたいと思っています。

さて、今回の大会では腸内環境をテーマにしたシンポジウムがありました。慢性疾患に対する医療費の増大から予防医療が注目されています。厚労省ジェネリック薬品を推奨したり、特定保健食品制度を作ったり、薬局の相談体制を強化するために働きかけたり、・・・と躍起になっています。その慢性疾患予防の一つの分野に”腸内環境”があります。ただ、予防の場合は、医薬品の審査のようなものが存在しません。ですから「これにも効く、あれにも効く」となりがちなので、そこは専門家が正しい方向を示す必要があると思います。

腸の環境作りとして、乳酸菌やビフィズス菌を使ったプロバイオティクスが盛んです。そして、いろいろな疾患に関与するとして記事になったりマスコミで取り上げられたりしています。例えば、アレルギー疾患(喘息やアトピー性皮膚炎)・自己免疫疾患・自閉症摂食障害・肥満・糖尿病・高血圧・動脈硬化・がん・炎症性腸疾患・肝疾患・腎疾患・慢性皮膚病・感染症・・・・などが予防できるような極論になることも珍しくありません。確かに多くの研究により関連は示されてきていますが、どの程度の影響度があるのかが重要なのです。

その中で、ある程度の重要性があり予防に投資した場合にメリットが出そうな分野に免疫系疾患があると私は今考えています。アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患、関節リウマチやエリテマトーデスなどの膠原病クローン病潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患、などなど免疫系の異常による病気はたくさんありますが、一部の難治ケースでは非常に高額な生物学的製剤を使用せざるを得ません。更にこれらの免疫系異常疾患は増加傾向にあること、若い頃からも発症すること、など医療財政を圧迫する要因の一つでもあるのです。病人である患者の視点に立てば、一生続く治療と医療費負担に加え、副作用におびえ続けなければなりません。

一つの解決的な予防策として、腸内環境が大切だと考えています。そこで、いろいろな製品がある中で何を選択したらいいのかとの疑問が生まれます。最近の研究により腸内細菌は100兆個とも言われヒトの細胞の60兆個の倍近い数が存在し、絶妙なバランスを保っています。現時点で言えることは、このバランスを人為的に大きく崩すことは問題なのではないかということ。ですから、プロバイオティクスにしても一つの製品を使用するよりも、複数の製品を適宜ローテーションで使用すると良いのではないでしょうか。

腸内では、いろいろな信号が行き交っています。これが腸内環境の素晴らしさなのですから、この多様性を壊さないような対策が、効果的な予防策と言えるでしょう。そして腸内細菌のエサは私たちが普段食べる食品ですから、今は古いフレーズですが「1日30品目」を目標に多様な食品類を摂取することも大切です。

ところで、動脈硬化などの予防に腸内環境の視点でプロバイオティクスを取り入れることはどうなのでしょうか。悪くはないでしょうが、恐らくその前にやることの方が効果的だと考えます。例えば高血圧や糖尿病を予防したりすることの方がより重要ですから。そして高血圧や糖尿病などでは腸内環境を整える前に、食事や運動での見直しの方が効果がありますから、プロバイオティクスに期待し過ぎるのはどうかなと私は考えているのです。

商業主義に乗れば、腸内環境であらゆる病気は治るし予防もできるとなるでしょう。しかし可能性はあっても、実際に効果的かは冷静に考える必要があります。残念なことに栃木県で1型糖尿病の小学生が祈祷師に頼ったばかりに死亡する事件が起きました。両親の複雑な思いは推察できるものではありませんが、誰か相談できる人がいたらと思うと残念です。

漢方相談に奇跡を求めて相談される方は少なくありませんが、医療人としての常識の範囲で対応することを常に意識しています。時には功名心などから奇跡を願うこともありますが、それでもどこかにクールな部分を持っているつもりです。例え利益につながらなくても、それが私の矜持です。



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