卵子の老化に対する一つの考え

 当薬局は現在、漢方相談・心理相談・皮膚病相談を中心にしていますが、私が師事した漢方の先生は不妊の漢方治療で有名な銀座玄和堂診療所の寺師睦宗先生なので、漢方の勉強≒不妊の勉強でもありました。そうです、不妊の相談においては自然と力が入るのです。そして、漢方相談を始めた20数年前は妊娠して無事に出産まで至るケースも多く、漢方に益々のめりこむ結果となりました。ところが最近は、晩婚化などの影響でしょうか、不妊相談の年齢が10歳程度上がり、今までのような漢方薬の使い方ではなかなか妊娠しにくい状況となっています。数年前にNHKが取り上げた《卵子の老化》を実感として私も感じています。

 当然のことながら、相談者の平均年齢も40歳前後ですから、最先端の生殖医療を行っても妊娠の確率は高くありません。治療の金銭的・身体的負担も加わり、どこかで線を引く必要もありますが、簡単に結論の出る問題でもありませんし、一度結論を出しても簡単に納得できるものでもないでしょう。思い描いてきた将来像の喪失に対するカウンセリングも必要です。不妊症の相談では、妊娠・出産に向けて努力するのは当たり前で、妊娠に至らなかった場合や妊娠しても流産した場合などの精神的ケアも含めた対応が重要になってきていると考えています。

 そこで、晩婚化に伴い重要度を増している《卵子の老化》に対する私の考え方をしめしてみます。体外受精や顕微授精では全く参考にならないと思うのですが、タイミング法や人工授精には役立つ考えだと思います。受精とは、精子卵子の細胞に進入することで成立します。老化現象とは、細胞の酸化などによる機能低下と考えられますから、酸化がキーワードとなるでしょう。では、老化した卵子は酸化によってどんな変化が起きているのでしょうか?

 どんな細胞も、細胞の周囲は細胞膜で覆われています。この細胞膜によって細胞の内と外が隔てられており、物質の出入りも細胞膜の柔軟性があってこそスムーズに行われるのです。そうです、細胞膜が酸化により老化すると、細胞膜の柔軟性は低下し物質の出入りはスムーズに行われなくなります。卵子に進入しようとする精子にとっても硬い細胞膜では受精しにくく、柔らかい細胞膜の方が受精しやすいのです。

 この視点に気づいてから、細胞膜の酸化を抑えるようなビタミンや細胞膜の柔軟性を取り戻す脂質(細胞膜の原料)を漢方薬と併せて使うことを何人かに提案しました。人数が限られているので断定的な表現はできませんが、今のところ妊娠率は高まっている印象です。このビタミンと脂質はサプリメントとしても販売されている一般的なものですから、安全性に問題はないと考えていますが、サプリメントは製品の品質にバラツキがあり過ぎるので、私は医薬品の使用を勧めています。

 卵子の老化では、ミトコンドリア機能からも論じられているようですが、ミトコンドリアを覆う膜も細胞膜と同じ原料ですから、膜の柔軟性を高めることは結果的にミトコンドリアの機能を高めることにつながると思います。

 不妊相談の全ての人が対象とは考えませんが、私は30代後半になったらビタミンか脂質のどちらかを検討しても良いのではないでしょうか。40代に入ったら待ったなしですからビタミンも脂質も両方必要と考えています。
 ストレス社会と言われる現在ですから20代や30代前半でも、食生活が乱れている方・生活リズムが崩れている方・ストレスの発散が上手くできてない人などでは、卵子の細胞膜が早く硬くなるのではないかと考えます。
 現代は、漢方薬が効く前提条件を調えることから始める時代になっているのかもしれません。


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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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