腱鞘炎の対処法

 台風さえ来なければ、秋は比較的過ごしやすい季節なのでしょう。行楽の秋、食欲の秋、読書の秋、などなど、何をするにも快適な環境です。新潟県では雪が降りだす前の作業として、大掃除や布団干しや雪囲いなどがあり、秋の晴天は貴重な機会となっているのです。私にとってこの時期は学会や研究会などに参加する勉強の秋です。行楽地の賑わいなどをニュースで聞きながらコンクリート製の建物の中で机にかじりついているのが例年繰り返されるパターンとなっています。どのような過ごし方をするにせよ、日頃できないことでリフレッシュできるなら、最高な時間の使い方なのでしょうね。

 さて、学会や研究会に参加して新たな情報に触れるたびに一生懸命メモするわけですね。普段はパソコン作業が中心になりましたから学生時代と違って大量に文字を書く学会では途中で手が疲れてきます。「使い過ぎ」のサインですよね。こんな時はできるだけ負担を減らすように記録も簡略化するように心がけるようにしていますが、興味深い内容だとサインを無視して必死にメモします。私の場合は1〜2日のことですから大したことにはなりませんが、職業で毎日このような負担を続けるとどうなるのでしょう?

 初期には疲れを感じていても、毎日のことで慢性化するとサインとしての認識は薄まってきます。ですから使い続けた結果、痛みや腫れという炎症症状として身体は異常を示すようになります。車のエンジンに例えるならオーバーヒートする直前の状態と言えるでしょう。この状態でも無理して作業を続ければ身体は壊れてしまうわけですから、「痛み」という強力なサインを発するわけです。腱鞘炎の痛みには、このような意味があると考えられます。

 そこで正しい対処法となると、どうしても休ませることが必要となってきます。ところが、仕事が腱鞘炎に関係していると簡単に休むことはできないので、痛みや腫れなどの炎症症状は鎮痛薬や抗炎症薬などで誤魔化しながら仕事をせざるを得ません。現実的にはある意味仕方ないことですが、腱鞘炎の発症過程を考えるなら、仕事のペースを落とすなど負担を減らさずに薬だけを使うことは、火災現場で火に油を注ぎながら消火活動をしている状態と考えます。少なくとも火に注ぐ油の量を調節できたら消火活動もスムーズに運ぶことでしょう。

 腱鞘炎の相談に際し、私はテーピングや簡易ギブス(副子)などで関節の可動制限をすすめています。できる範囲で行うしかありませんが、なんとか仕事ができるくらいの制限をかけたり、日中が無理なら夜間や休日だけでもしてもらうように説明しています。これで火に注ぐ油の量を少しでも減らすことができれば、鎮痛薬や抗炎症薬の効果も発揮しやすくなるのです。火災現場では燃えている時間が長いほど被害は大きくなります。つまり身体では痛みや腫れが長引くほど局所組織の破壊が進み、場合によっては修復不可能な状態にまでなります。このような手遅れにならないためにも最大の効果を得るよう薬を選択し正しく使ってもらいたいと考えます。

 通常は、貼ったり塗ったりする外用薬と内服の抗炎症薬を組み合わせることが望ましいと考えます。薬による副作用やアレルギーがあったり更なる効果アップを考えて、漢方薬を使用することもあります。薬を1種類にするのか、2〜3種類を組み合わせるのかは、組織破壊をどの段階で止めるのかと関係してきますので、医師や薬剤師と相談されることをお薦めします。
 
 「たかが腱鞘炎」「とりあえず痛みが押さえられればいい」と考えているなら、大きな後悔をすることになるかもしれませんので、気をつけていただきたいと思います。


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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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