肩こりとリラクセーション

 薬剤師として臨床に携わって約30年。大学卒業したばかりの頃は、理屈を優先するだけで背景因子も考えず、心理的要因はもちろん、私の言動がどのような影響を与えるかなど何も考えずに仕事をしていました。いろいろな経験を積み、あちこちの研修会や学会に参加して、ようやく自分の言葉の持つ影響力にお身が至るようになりました。少々遅かった感も否めませんが、今言葉の持つ癒しの力に興味を持っています。NHKのドラマ「この声をきみに」で紹介される文章に引き込まれているんです。言葉の持つ癒しの力に気づかなければ恐らく見ることなどなかったドラマでしょうね。

 今週末は、日本催眠医学心理学会と日本臨床催眠学会の合同大会(以下、合同大会と称します)に来ています。漢方相談の効果を高めるために始めた心理の勉強、そして薬の使用を減らす可能性を求めて心理療法の世界へ、その結果辿り着いた一つの結論が「薬の効果の限界」でした。薬の専門家としては失格者かも知れません。しかし、治療者としては失格とは思っていませんし、むしろ限界というか相談者と治療者のスレや距離を縮めることができる一つの方法に気づき、その方向性を示せることに喜びを感じています。かなり多くの心理療法の勉強と研修を重ねてきた中で、必ず出てくるキーワードが「催眠」だったので、学会で正しい知識と技術を学んでいるのです。

 まったくの個人的な印象ですけど、いわゆる「催眠」は3つに大きく分けられるのではないかと思うのです。一つはエンターテイメントとしての「ショー催眠」で、これは治療にはほとんど役に立ちません。二つ目は古典的催眠と称されるもので、治療的要素はあるものの治療法としての効果はかなり限定的になりますし、相談者・クライエントの持つ可能性はかなり限定的です。3つ目はエリクソニアンアプローチとも言われる方法で、従来の催眠的要素を相当省き、代わりに相談者・クライエントの自主性・自然な回復力を信頼するアプローチです。

 どんな方法にしても、それが有効なら治療に取り入れていくのが臨床家に求められる姿勢だと今までの勉強で学んできました。つい最近(2日くらい前)まで、私は「肩こり」に対しての薬の効果は2割程度の限定されたものとの立場で関わってきました。だから、ストレッチや運動を積極的に取り入れる必要があるのだと説明してきたものです。その考えは今回の合同大会で少し修正されました。合同大会は、まだ1日残っていますが、私の相談にリラクセーションを取り入れれば、そして日々実践してもらえれば、さらにストレッチやリハビリテーションと組み合わせれば、今までよりも満足度の高い相談が実現できるとの思いに至ったのです。

 私の目指すゴールは、長期間飲んでもらえる薬やサプリメントを探すことではありません。一時的に薬に助けを求めることはあっても、最終的には「薬なし・サプリメントフリー」でも大丈夫な状態になってもらうことです。ですから、食事・栄養や運動・リハビリ、ストレスコーピングやコミュニケーションスキル、生活リズムなども含めた習慣、睡眠や休養、など効果的なものは積極的に取り入れるつもりで関わっています。

 リラクセーションとストレッチの方法を身につけてもらい、必要ならビタミン剤や漢方薬などで一時しのぎをするにしても、基本的にはリラクセーションはかなり重要だと考えています。そして、効果的なリラクセーションに有用なのが催眠的な要素かとも考えるに至りました。
 実際の臨床でも、学術的・治療的に「催眠」を利用している方は、いわゆる催眠らしさは表面に出さず、そのエッセンスだけを上手く利用しているのです。その点では、「催眠」を意識して使っていない治療者でも、催眠的要素を実際の臨床では取り入れていることになります。また、今注目されている認知行動療法にしても、マインドフルネスにしても、私が時々紹介する自律訓練法にしても、催眠とは切っても切れない関係があるのです。

 今回の合同大会ではテクニックというよりも学術的な研究成果を多く学んでいます。肩こりだけでなく、慢性の痛み、難治性の病気、いろいろなものに安全で効果的に利用できる治療法としての催眠療法です。恐らく、月曜からの相談には催眠的な要素が入りますが、ほとんどの方は違いに気がつかないでしょう。実際の催眠の運用とはそのようなものなのです。そして、その方が効果が高いことにも気づかないと思います。たぶん、私の漢方相談の過程に様々な心理テクニックが入っていることに気づいている方が少ないように。


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
http://hirohashi-pharma.sakura.ne.jp/ (アドレスを変更しました)

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