便秘治療は新たな時代に

 「人生には必要なものが3つある。それは、水と空気とストロークだ。」と言ったのは、私が交流分析の研修を受けた時の講師。もちろん、食料など他に必要なものはありますが、水や空気と同じくらいストロークが重要だと言ったわけです。ストロークとは「人の存在を認めているというサイン」ということ。例えば、誰かがあいさつをした時に別の誰かから挨拶が返ってくればストロークがあるわけですし、全くの無反応ならストロークは無いわけです。つまりストロークがない状態というのはコミュニケーションが成立しない状態ですから、人はどんどん孤立化することになります。おそらく孤独を抱えていたであろう9人の若者が殺害されるという痛ましい事件が発生しました。詳細は今後明らかにされていくのでしょうが、この事件に関係される方々に一日も早く平穏な日常が訪れることを願っています。
 気になっていながらも音信の途絶えている人がいたら連絡をしてはいかがでしょうか?ストロークが返って来るかわからなくても、その人にストロークを与えることは出来ますから。

 話は変わり、最近は便秘に対する考え方を変える必要があるように思っています。もともと便秘薬は刺激性緩下薬が中心に使われてきました。便を柔らかくする塩類下剤や便の量(嵩)を増す線維性下剤などは、刺激性緩下薬の補助としての意味合いが強かったように感じます。塩類下剤や線維性下剤の穏やかな作用に比べ、それだけ刺激性緩下薬は効果が実感しやすい(良くも悪くも)のです。医療者(医師と薬剤師)も患者さんも効果を感じ、価格も安くあれば、使わないという選択肢はないでしょう。しかし、その一方で薬剤耐性という問題もクローズアップされてきました。今までの使用量では充分な効果が得られず徐々に量が増えていくのです。こうなると悪循環で、「出ないから使用量を増やす」⇔「しばらくは出るけど、また出なくなる」が永遠に繰り返されることになります。

 もちろん使用量を増やさないように、便秘薬に頼り過ぎないように、食事に気をつけたり運動したりマッサージを取り入れたり、生活上の工夫を凝らしています。医療者側も、塩類下剤や線維性下剤を組み合わせたりと努力してきました。けれど刺激性緩下薬の効き目の前では、その存在感は薄れるしかなかったと思います。そして、使用量が増えるという悪循環へ陥る人が少なくないわけです。

 ただ、その便秘薬市場にルビプロストンという新薬が登場しました。新しい作用機序とメーカーは言うものの酸化マグネシウムのような塩類下剤と働き方は大きな違いはありません。しかし、新薬ということと薬価が高いためにメーカー側はエビデンスという武器で販売攻勢をかけているのです。これはこれで悪いことではありませんが、働き方は同じなのにエビデンスの有無だけで、今までほぼ安全に何十年も使われてきた安い薬より高価な新薬の方が優れているとするのには疑問を感じています。でも、良い面もあり、刺激性緩下薬一辺倒だった便秘治療薬に一石を投じたと言えるでしょう。

 高い新薬を使うか使わないかを述べるつもりは全くありません。ある専門家は「刺激性緩下薬を1週間以上連続して使うことは問題がある」と言っていることから、塩類下剤や線維性下剤、乳酸菌製剤などの整腸薬、薬を使わない食事や運動などの生活習慣、マッサージや排便習慣などの行動療法、これらをもっと積極的に活用して刺激性下剤の使用量を増やさないような工夫が必要なのではないでしょうか。
 そして、一般的にはソフトなイメージのある漢方薬・生薬もほとんどが刺激性緩下薬に分類される薬剤であることを忘れてはなりません。

 「薬を使うこと、増やすこと」よりも「薬を減らすこと、使わないこと」のほうが、高度な知識ときめ細やかな技術を必要とします。この身近にある難しい問題をクローズアップさせたことで、刺激性緩下薬に頼り過ぎてた便秘治療が新しい時代を迎えたと思っています。
 刺激性緩下薬を減らすことは薬局でも不可能ではありません。当薬局にも成功したケースは何人もあり、ある程度のノウハウも確立しています。便秘薬の減量に興味のある方、相談をお待ちしています。その時は、現在使用中の薬やサプリメントなど全て持参ください。


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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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