アトピー性皮膚炎をどう治す?

先週は、4日土曜に東京慈恵会医大で行われたアトピー性皮膚炎治療研究会に、5日日曜は日本皮膚科心身医学会に参加してきました。
皮膚科疾患は、私も力を入れている相談分野の一つです。しかも患者数の多いアトピー性皮膚炎がテーマの研究会、さらにもう一つ力を入れている分野、心身医学が合体した学会も同会場で連続して行われるということで、薬局を臨時の休みにして参加してきました。

20年くらい前でしょうか、マスコミを中心に過剰ともいえるステロイド治療へのバッシング報道がされ、その影響でステロイド治療への不信が高まり、ステロイド治療以外の治療法が注目され、怪しげなアトピービジネスなども雨後の竹の子のように現れました。私ら漢方業界・薬局業界もその一部に含まれる行為がなかったとは言い切れないでしょう。でもそのような人は極一部で、大多数の専門家はステロイド治療に対し過剰な偏見は持っていません。

今現在、私が懇親会で話したアトピー性皮膚炎の専門医たちは、ステロイドを拒否する患者さんに誤解のないよう説明するものの強制はしないとの立場でした。強制しても結局使用するのは患者さんですから、納得しなければ薬(ステロイド薬など)を使用しないか、別の医師を探すか、怪しい商法に飛びつくか、がほとんどです。漢方薬を扱う私にもステロイドを使いたくないという方が相談に来られますが、ガイドラインに沿った説明をし無理にステロイドをやめさせるような話はしません。一番大切なことは、早く楽にしてあげること(それはクライエントの希望に沿う形で、でも誤解があれば正確な情報を伝えて客観的に判断してもらってから)です。

さてアトピー性皮膚炎の治し方ですが、皮膚科の立場からは基本はステロイドの塗り薬(外用薬)になります。会場に入ったのが少し遅れたので肝心の部分は聞き逃したのですが、断片をつなげてみれば、今までの使い方は中途半端すぎて逆にステロイドの悪い面ばかりが出やすかったのでは?ということです。

ですから、皮膚炎の状態に合わせて、必要な強さのステロイド外用薬(ステロイドの強さで5グループに分類されます)を、充分な量(現在はFTUという単位で使用量を説明します)、そして充分な期間(炎症状態が落ち着きを示すまで)、しっかり使うことが大切です。

この方法では、恐らく多くの方が「そんなにたくさん使って大丈夫なの?」と疑問を持たれるかもしれません。しかし、早く効果が出ればその分早くステロイドを使用しないようになるので、最終的なステロイドの使用量は少なくなるのです。中途半端に使う方が、総使用量は多くなり、結果的に副作用が出やすくなります。皮膚炎が落ち着いたら、再発を抑えるためにスキンケアを行うことで、かゆみ・赤みなどの悩みから脱却できます。

しかし、100%の方が、これで改善するかと言ったら何割かは改善しないケース(あるいは、多少改善しても満足できないケース)が存在します。そこに、焦点が当たった研究会でした。漢方薬の話題はなかったものの心理的なケアを加えることで、悪化を改善する方法が紹介され非常に参考になった研究会でした。

会場の慈恵医大は、森田療法のメッカですから、森田療法のテーマが多かったのですが、ブリーフセラピー的な関与やトラウマの視点からの関与、あるいは認知療法的な視点などが報告されました。

では、実際にどのようにすればいいのでしょう?まず、ステロイドの希望を確認します。私の今までの経験では「絶対イヤだ!」という方はほとんどいません。ですから皮膚科の治療を並行して漢方薬をプラスすることになります。皮膚の状態と痒みの強さ、全身状態を考慮して漢方薬は決まります。私が使う漢方薬は20種類以上あるでしょうから、特定の漢方薬を紹介することは控えます。

そして、掻く行為にも焦点を当てる必要があります。なぜなら掻くことでアトピー性皮膚炎は確実に悪化し痒みが増すからさらに掻きたくなるの悪循環に陥るからです。ここに心理療法の視点を取り入れることで効果がより確実に上がりやすくなります。

アトピー性皮膚炎は、難治性の皮膚病ですから、いろいろな要因が複合的に関連して症状を発現しています。皮膚炎の症状を抑えることではステロイドを中心(強さ・使用量・使用期間が適切であることがポイント)とすべきですが、心理社会的な影響や食生活(以前も紹介したかもしれませんが、大阪市大のグループは興味深い報告をしています)など全般的な視点も忘れてはいけないでしょう。


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