全体を観る漢方

いよいよ7月です。土、日と東京で行われた日本東洋医学会に参加してきました。分科会がたくさんあったのは嬉しいのですが、詰め込み過ぎ?じゃないかと・・・。いくつかは同じ時間帯に行われており、渋々苦渋の決断をすることになったりと。でも、最近の流れも掴めた気がしますし、発表を聞きながら自分なら…と考えたりしました。が、発表演題に興味を引くものが少なかったように感じたのは、東洋医学会のレベルが下がっているのか?、私の実力が上がってきたのか?どちらでしょうか。

私の興味のあるシンポジウムやワークショップを中心に回ってきましたが、ガンの漢方療法では、まだまだいろいろな考え方が存在します。このことは、ガンに対して手探りの部分が多く残っていることであったり、いろいろなアプローチがあることを示しており、決定打がないという欠点と代替策がたくさんあるという利点とみることができます。そして、漢方薬を使うことで基礎研究からは、癌細胞の増殖や転移を抑えることが示され、がん治療の副作用対策だけでなく積極的ながん治療に対する効果も臨床報告されました。なかでも灸との組み合わせによりガンが消えたケースの存在は大いに参考になっています。各種高価なサプリメントが出回っていますが、基本は漢方薬だと改めて認識しました。

不妊治療では、私の恩師寺師先生の若先生が「母体つくり」を中心に解説され、生殖器以外の全体とのバランスがいかに大切かとの報告に、改めて玄和堂で学んで良かったと思った次第です。子宮と卵巣と精子で行われる高度不妊医療の限界を「卵子の老化」問題にすり替えている流れに違和感を唱えておられ「全くだ」と思ったものです。私が今まであまり重視してこなかった性交痛は、意外にも漢方的な問題を抱えていることが再認識でき今後の相談に活かさねばと思っています。

皮膚病の漢方治療では、皮膚はあくまでも体内の異常の結果であり五臓(肝・心・脾・肺・腎)の機能失調との関係を見つめ直す機会となりました。ベテラン座長の「皮膚を通して全身を観る」との言葉は強く印象に残っています。治りにくい皮膚病に対して、現代皮膚科治療の欠点を補う漢方薬の効果はやはりすぐれたものがあります。

精神疾患に対しては、パニック発作などに対し古典の解釈を見事臨床に活かした発表に感心しました。鬱病統合失調症・PTSDなどの発表もありましたが、目新しい知見は得られませんでした。この分野は漢方薬だけでなく、心理療法の効果も併せて考える必要があり、東洋心身医学会の方が面白いかもしれません。

リウマチ・膠原病の分野では、近年生物学的製剤という新たな薬剤の登場により劇的に変化しましたが、副作用や長期使用での安全性など未だ不明なことも多くあり、漢方薬の出番がないわけではありません。が、ガンの漢方治療と同様、中心は現代医学的手法を補助的には漢方薬が使用されることになるのでしょう。そして、健康生成論的には自然炎症と言う概念に対して、および免疫システムのバランスの修復などに漢方薬が用いられ、切れ味は鋭いが矛盾も多く抱えた現代医療に対するより根本的な治療法としての漢方薬が見直されてくるように感じました。

ただ、他の参加者も話していましたが、2種類3種類の漢方薬を使用したケースの発表が目立ちました。私は温師の教えを忠実に守って「基本的には1種類、やむ得ない時でも2種類」と考えてきましたが、保険で使えるからか?ちょっと安易かなとの印象を受けました。でも、必要なら2種類3種類を使う必要もあるのだなと感じています。例えば、1種類ではどうしても効かない時などですね。



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