被災後の健康リスク管理

昨日、2回目の新潟薬科大学での漢方概論の講義を終えてきました。今年から非常勤講師として学生に接していますが、実学として活かせる内容にするため、私の症例を交えながら解説しています。今回の熊本地震は、その1回目の講義の晩に発生しました。残念なことにエコノミークラス症候群で亡くなった方も出たため、この機会に対策としての漢方薬の可能性を紹介しました。少しでも身近に漢方薬を感じてもらいたいものですし、漢方薬を扱わないにしても偏見のない知識を身に付けて欲しいと願っています。

先日亡くなった方は、私と同年代の女性です。気持ちの上では病気とはまだまだ無縁と考える年代かと思います。でも、確実に身体は老化していますし、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓塞栓症)は年齢にかかわらず発症します。現役のプロスポーツ選手でさえ発症するのですから、誰にでも起こり得るとの認識が必要でしょう。特に、車での避難生活を送っている方には報道や保健師の活動により注意していても、改めて気をつけて頂きたいと思うのです。

「足は第2の心臓」と言われるように、足を動かすことは血行改善に大切なことです。ですから車での避難生活では、足が充分に動かせないために血行が悪くなりやすいのです。また、ふくらはぎの部分にある静脈は、普通の静脈にある逆流防止用の弁が無いので血液がよどみやすい構造となっています。積極的に動かさないと簡単に血栓ができると考えていいのです。足を動かすことで筋肉の収縮により血行が促され血栓ができるのを防ぐことができます。

また、血液のよどみを防ぐもう一つの方法として弾性ストッキングを使うこともお勧めです。適度な弾力でふくらはぎを締め付けることで、静脈血を深部静脈に集中させ、締め付けの圧力で血管径を細く保ち、スムーズな血流を保ちます。定期的に足を動かすことと組み合わせれば相当効果的かと思いますし、夜間など意識的に足を動かせない場合に使用するだけでも違うでしょう。

そして、「水分を摂りましょう」とも言われていますが、私は疑問視しています。なぜなら水分補給は脱水状態では効果的ですが、普通の状態では血液をサラサラにする効果はないと言われているからですね。気温の高い夏や高熱や下痢などの状況でもなければ水分補給に意味は無いと考えます。人によっては水分源としてお茶やコーヒーなどのカフェイン含有飲料あるいはアルコールなどを摂取するかも知れませんが、利尿作用のあるこれらの水分摂取は逆に脱水を促すことになり危険ですらあります。注意したいものです。

昨日学生に話した方法として漢方薬の活血薬の使用です。確か、血液を固める凝固反応を抑える作用が認められていますし、出血しやすいなどの副作用も確認されていません。上手く使用すれば、血栓ができるのを抑えエコノミークラス症候群の予防につながることと期待できます。実学としての東洋医学を、このような場面でもっと活用してよいのではないでしょうか。

余震の収まる気配がない状況は、かなりのストレスと思います。このストレス状況は、血液の凝固を促しますのでストレス対策も重要です。いろいろな方法がありますが、気分転換も時には必要と考えます。
更に、ストレス状況により不眠に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。睡眠の心身に及ぼす好影響を減らしたくありませんが、余震の続く状態では難しいかもしれません。しかしカフェイン含有飲料やアルコールは睡眠の質を悪化させますので、特に寝酒としてのアルコールには注意しましょう。

私は心身医学も専門としているのでPTSDの発症も気になります。今の時点でPTSDの診断はできませんが、ストレス状態により交感神経の緊張状態が続くとPTSD発症の可能性が高まると言われますし、交感神経の働きを抑える薬剤がPTSDの予防に効果的との報告もあります。そこで、緊張状態を緩和する目的で漢方薬を使用する方法もありますし、自律訓練法などのリラックス法を実践することも重要と考えます。ちなみに緊張状態の指標としては、脈拍数を数えるのが手軽でしょう。いつもより脈拍数が高い場合は、緊張状態にあると考え、適度な休息をはさんでメリハリをつけることがポイントと考えます。
常に伸びきった状態の輪ゴムは、早く傷むでしょうから。

インフラが普及しきってない現状では、口腔衛生の悪化も気になります。考えすぎかもしれませんが、感染性心内膜炎の発生も増加するように思います。エコノミークラス症候群と同様に致死率が高いため、予防策が重要になります。口腔衛生が全てでないものの、影響は小さくないので口腔衛生にも気を配っていただきたいと思ってます。

とにかく、これ以上被害が大きくならないことと、1日も早く平穏が戻ることを願っています。



漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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