不眠症相談のゴールは?

 世の中には「眠れない」ことで悩んでいる方が大勢います。その一方で睡眠導入剤に抵抗を覚える方もたくさんいます。「大量を飲むと死んでしまう」とか「依存症になって止められなくなる」などのイメージが睡眠導入剤にはあるからでしょう。だからなのかもしれませんが、寝酒と称して睡眠導入剤の代わりにアルコールを飲んで眠る方もいらっしゃいます。

 「ただ眠れればいい」と安易に睡眠導入剤に頼り切るのも困りものですが、アルコールを睡眠導入剤代わりに使用することも睡眠の質の観点からはお勧めできません。当薬局に相談に来られるケースは大半が「睡眠導入剤を止めたい」「睡眠導入剤を使いたくないから漢方薬で眠れるようになりたい」との理由です。これらの要望には当然応えるつもりで相談を受けますが、睡眠導入剤の代わりに漢方薬を続けるのなら、単に薬の種類が変わっただけで真のゴールとは言えないと考えています。

 私の相談は日本心療内科学会に入会してから幅が広がりました。初めは漢方薬の効果を高めるために心理的なテクニックが利用できないかと考えていたのです。しかし、それ以上の効果があることも経験し徐々に考え方も変化してきました。今は「必要がなければ漢方薬も使わない」あるいは「漢方薬を早く止めるために積極的に心理テクニックを利用する」ようにしています。

 「眠れない」と悩んでいる方は、「何にも頼らずに自然な眠りを取り戻したい」ではないでしょうか?これは何も不眠症の方だけではなく、多くの病気や症状で悩んでいる方に共通する思いではないかと考えています。そこで、薬以外にも利用できるものは積極的に利用するようにしています。サプリメントや健康食品に切り替えるのではありません。できるだけ安価で、またいつでもどこでも利用できるようなスキルを学習してもらうのです。たとえば自律訓練法のようなものです。また、睡眠導入剤や睡眠に関する正しい知識の提供も重要です。

 今は大量に飲んでも呼吸が停止して死ぬような睡眠導入剤はほぼありません。また、最近開発された睡眠導入剤(睡眠改善剤)には依存症の心配もほとんどありません。睡眠時間についても8時間にこだわる必要は無く、年齢や個人差により幅があるのです。睡眠の質とも関連しますから、単純に時間で良し悪しを判断できるものではないのです。

 現在、私が考える「不眠相談のゴール」は、先ず、薬などに頼らず自然な眠りを得ること、次に睡眠だけでなく1日単位・週単位・月単位での一定の生活リズムを確保できるようになることです。つい最近、生活リズムをゴールに加えました。時間生理学の視点から見ると睡眠だけ改善してもリズムが崩れていては健康上いろいろな問題があることがわかってきたからです。

 「眠れない」ことの背景には人により様々な要因があります。その背景に目を向けず耳を傾けず安易に睡眠導入剤に頼っても改善しにくいのです。米国からの報告では「治りにくい不眠の原因」として睡眠導入剤に頼り過ぎることが挙げられています(Krakow et al J Nerv Ment Dis.2010)。睡眠導入剤を怖がる必要はありませんが、睡眠も含めて正しい知識で対応したいものです。


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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