「女性の人生は痛みと共にある」という言葉が示すように
痛みを抱えている女性は多くいます。中でも毎月訪れる月経に
伴う生理痛は、生殖可能年齢女性の多くが経験していることの
ようです。
ある程度の痛みになると「月経困難症」と呼ばれますが、
単なる痛みの強い生理痛ではなく「子宮内膜症」という別の
病気の可能性が高まります。生理のある女性の1割以上が
罹患しているとされますから女性にとっては身近な病気です。
現在、通常の鎮痛剤で対応できない場合は、ホルモン療法が
行われることになりますが、妊娠希望の女性には使用できない
などのデメリットがあります。最終的には、手術がありますが
これも問題点を抱えている状況です。
そこで、漢方薬を使用するケースも珍しくないわけです。
漢方薬としては、血(けつ)の問題として対処することが多く、
補血剤や駆瘀血剤が主に使用され、効果も上がっています。
ところが昨年、名古屋大学の村岡彩子らが発表した論文では、
子宮内膜症の原因としてフソバクテリウムという細菌の可能性に
言及しています。(A. Muraoka et al. Sci. Transl. Med.
15, eadd1531; 2023)
まだまだ抗生物質で子宮内膜症を治療する段階ではないものの
ホルモン療法に頼らない方法として注目が集まっています。
この発表を東洋医学に応用すれば、例えば冬瓜子という生薬が
配合された漢方薬は、腹腔内の感染症に用いられること、および
駆瘀血剤でもあることから子宮内膜症の漢方薬として十分な効果が
期待できます。
私も、時々くらいしか使用しませんが、もっと積極的に使用
すると良いのでしょう。もちろん、東洋医学的な体質を考慮し、
適切に漢方薬を選択することは欠かせません。
子宮内膜症は、放置すれば不妊症や卵巣がんにも関係して
きます。女性の健康寿命や快適寿命を延ばすという視点でも
いろいろな可能性を適切に取り入れてみたいものです。
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薬剤師・公認心理師(心理カウンセラー) 廣橋 義和
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