カゼには葛根湯でいいのか

カッコントウといえば医療従事者でない一般の方まで知っている有名な漢方薬です。江戸時代(だと思う)の落語にも葛根湯医者が登場するものがあります。


「カゼには漢方・葛根湯」のフレーズで、カゼといえばカッコントウさえ飲めば治るようなコマーシャルがあります。漢方を勉強する身としては、「そんな単純ではないぞ」と声を大にして叫びあい心境なのです。


カゼ(症候群)の進行を考えて漢方では6つの病期に分類しています。太陽病・少陽病・陽明病・太陰病・少陰病・厥陰病なのですが、病期によって治し方が違うのです。


カッコントウは太陽病の薬で、風邪をひいて3〜4日以内に用いる薬です。しかも汗が出ていないのが条件。汗と共に病を体外へ排出させるのがカッコントウです。


もし汗が出ている状態の人がカッコントウを飲むと、汗は更に出てそのまま続けると脱汗(ダッカン)という状態になります。脱汗とは汗と共に体力を消耗し、ケイレンや身体の冷えなどを伴う一種の脱水状態です。


このような理由で太陽病以外でカッコントウを用いることは基本的にありません。一部慢性の病気で使用することはあるのですが汗の有無を確認して脱汗に注意しながら漢方家は用います。


カッコントウは確かに使用頻度の高い漢方薬ですが、カゼに関しては病期を考えると「カゼには漢方・葛根湯」と言えるほど安心して使用できるものではないのです。汗の有無に関しても、その場で汗をかいている・いないではなく、温かい場所にいる時に衣服の内側の皮膚が湿っていれば汗と考えます。


私が相談を受ける時は、発病して何日か・汗や小便・大便はどうか・食欲や吐き気はあるか・どんな症状か・・などを聞いて100種以上あるカゼの漢方薬の中から選んでいます。考えすぎてわからなくなることもありますが・・・。


ドラッグストアなどでカッコントウを手にした時、あるいは医師の処方薬の中に入っていた時、今回の内容を思い出してください。汗が出てきたらカッコントウを飲むのは終わりです。脱汗を起こさないように気をつけてくださいね。


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