クローン病とアレルギー性鼻炎

 今年はなだらかに冬に突入するというよりは、ガクンガクンと気温が下がり1日で季節が変わるような変化が目立つ印象です。いよいよインフルエンザなどの感染症シーズンで、当初のワクチン不足などもあり不穏な幕開けを感じます。そして、大抵の風邪症候群(いわゆる”かぜ”)やインフルエンザの原因がウィルスによるもので抗生物質が無効だと専門学会やマスコミなどから医師や国民に向けて広報されていても、心配性の日本人は相変わらず抗生物質の使用にブレーキがかからないかもしれません。医療費や耐性菌のことを考えると、もう少し的を絞った使い方が広まるといいのにと思う昨今です。

 近年いろいろな場面で「腸内細菌叢(あるいは腸内フローラ)」という言葉を見かけるようになりました。分析技術の進歩でブラックボックスだった腸内細菌のことが詳しくわかるようになったおかげです。それとともに、腸内細菌叢と全身の病気との関連も多く報告されるようになっています。腸内細菌叢を変化させることで病気を治すこともクローン病などの一部の病気で研究が進められ従来の治療を上回る結果も報告されるようになってきました。一方、抗菌剤・抗生物質の乱用で腸内細菌叢が乱れ、難治性のクロストリジウム・ディフィシル感染症やアレルギー疾患の発症に関わっているとの報告もあります。

 今週の木曜(16日)に行われた新潟炎症性腸疾患研究会、そして金曜(17日)の中越地区・舌下免疫療法セミナーでの講演を聞いて、改めて腸内細菌叢について興味が湧いてきました。腸内細菌叢との関連が深く示唆されている病気には、クローン病潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、クロストリジウム・ディフィシル感染症などの感染性胃腸炎、糖尿病や心血管疾患などの生活習慣病認知症うつ病などの脳・神経疾患、ガンなど悪性疾患、リウマチなどの膠原病やアレルギー疾患、などがあります。これらの病気に対する治療法はある程度確立していますが、副作用の問題や通常の治療に反応しない難治性の場合もあり、多くの課題を抱えていることも事実です。

 そこで、副作用を気にする方や難治のケースで漢方相談に来られる方が多いのです。私のところでは東洋医学的な視点から病気を観ることで、今までとは異なる改善策を提供するよう心がけています。漢方薬だけで上手くいくこともありますが、重症になればなるほど漢方薬だけでのコントロールは難しくなります。ただ、病気のコントロールが困難でも、全身状態の改善(日常生活の快適さの向上、苦痛・副作用の軽減、など)により日常の活動範囲が広がるなどのメリットもあり、総合的な評価が高いことは漢方薬の一つの特徴です。

 また、漢方薬の服用により腸内細菌叢が変化するとの報告があることから、直接的効果とは別に間接的な効果も期待できると考えられています。腸内細菌叢はどんな病気にも関連する可能性がありますから、例え間接的な効果であっても通常治療の効果をさらに高める補助療法として積極的に組み合わせることを考えています。乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスが注目されますが、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクス、これらを組み合わせたシンバイオティクスも忘れてはなりません。特にプロバイオティクスは一過性だとの指摘もあることから、食事バランスを考慮したプレバイオティクスにもっと注目してもよいと思います。はるか過去に聞いた「1日30品目運動」は、バランス良い食事の基本となる考え方だと思い、私は「週30品目」を皆さんに推奨しています。

 難治性のクローン病やクロストリジウム・ディフィシル感染症に対し、他人の大便を使用した「糞便移植」の高い治療効果が関係者の注目を集め研究が進められています。この方法では約100gの大便を使用するようなので、菌の量は10兆個くらいとなるでしょう。通常のプロバイオティクスでの菌量は10億個程度なので1000倍の差がありますから、あくまでもプロバイオティクスは補助療法として位置づけることが大事です。しかし、その効果を高め病気のコントロールしやすくするために食事内容を見直すことが有効だとも考えています。

 抗生物質の使用で腸内細菌叢を乱さないで済むよう、健康な身体作りと同時に元気な腸内細菌叢作りを意識したいものです。


漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
http://hirohashi-pharma.sakura.ne.jp/ (アドレスを変更しました)

過去のブログの主なものはホームページにリンクを貼ってありますから、見たい記事がありましたら《ひろはし薬局のホームページ→過去のブロ
グ》から探してみてください。(現在の更新はしてませんが・・・)
  あるいは⇒http://www3.ocn.ne.jp/~hirohasi/sub6.htm

メールは《Re:タイトル》でお願いします。メールマガジンの申込も随時受付中
     ⇒8hirohashi@gmail.com

薬事法の関係で、具体的な薬品名は表示を控えています。お知りになりたい場合は、直接ご連絡ください。

講演の依頼に関しては、ホームページに掲載してある講演内容を参考にして、お申込下さい

訪問による出張相談にも応じています。
引きこもり・うつ病などのメンタル相談、外見の気になる皮膚病相談、病中・病後など体力低下による外出困難な場合、など