脳の老化とパーキンソン病

 かなり以前の私は「胃がもたれる」という言葉など全く理解できないほど、他人の2〜3倍の食事量をしても平気な胃腸でした。遠い昔のことのように懐かしく思い出します。ただ、私も加齢とともに消化機能の衰えが現れ、今やかつての1/4量〜1/5量で充分になっています。イヤ、充分というよりも食べ過ぎると「胃もたれ」を感じて半日くらいは苦しまなくてはなりませんから、限界と言う方が正確でしょう。たぶん胃腸だけでなく、あちこちの臓器が加齢の変化を起こしているのだと思います。さて、私の老後はどうなることやら?

 身体の老化を促進するものとして、私は「酸化」「糖化」「慢性炎症」の3つを重視しています。これらは単独で、あるいは組んで、身体の組織・臓器・細胞にダメージを与え続けているので、修復が上手く機能している時は影響がなくても、加齢とともに修復ミスが重なってくると色々な病気や症状としてあらわれてくるのです。修復ミスの一つの例として、私たちの身体の大部分を構成しているタンパク質の異常があります。もちろん通常は、修復ミスで生じた異常なタンパク質は分解されて再利用したり排泄されたりしてますので、病気に発展することはありません。

 ただ、老化とはこれらの分解・再利用・排泄のサイクルも遅くなりますから、異常なタンパク質は加齢とともに体内に溜まってくるのです。アルツハイマー認知症ではβアミロイドという異常たんぱく質が溜まって脳細胞を破壊します。またパーキンソン病レビー小体型認知症ではαシヌクレインという異常たんぱく質が溜まってくるのです。異常なたんぱく質は正常なたんぱく質と比べ、折れたたみ方が異なるために本来の機能が発揮できないようになっています。そこで、折れたたみ方の異常という意味で、アルツハイマー病やパーキンソン病などの異常たんぱく質が関係する病気をまとめてミスフォールディング病と表現する場合もあるのです。

 この異常たんぱく質の発生に特に大きく関係するのが「酸化」のようです。そして「糖化」と「慢性炎症」は「酸化」を加速させる促進剤として働きます。このような考え方に基づくと、パーキンソン病の治療に使われるドパミン関連薬に加え、酸化防止薬・酸化防止食品などを摂りいれることで、少しでも進行を遅らせることができるのではないでしょうか。また、パーキンソン病だけでなくレビー小体型認知症アルツハイマー認知症などの認知症の予防を考えるうえでも大きなヒントとなりそうです。

 加齢黄斑変性症では、ビタミンCやビタミンEやルテインなどの抗酸化物質が発症抑制に関連しています。アルツハイマー認知症でも、野菜や果物などの摂取量が多い人ほど(抗酸化物質の摂取量が多い人ほど)発症が少ないとされます。目に対するルテインのように、脳に保護的に働く抗酸化物質もあるでしょう。抗酸化物質で異常たんぱく質の発生量を減らし、適度な運動で発生した異常たんぱく質の処理を進めることが、ミスフォールディング病の予防および進行防止に非常に必要なことだと今現在の私は考えています。

 そして、この加齢現象を東洋医学では「腎機能の盛衰」としてとらえています。ですから「腎」を保護する「補腎薬」に属する漢方薬の使用がパーキンソン病レビー小体型認知症アルツハイマー認知症の予防ならびに進行防止に有効です。なお、東洋医学でいう「腎」とは現代の解剖学的な腎臓よりも多くの機能を持った概念ですから、実際の腎臓病や検査項目上の腎機能とは全く関係がありません。パーキンソン病アルツハイマー認知症では、病気として診断される5年〜10年も以前から異常たんぱく質の蓄積が始まっていることが知られています。

 超高齢化社会を迎え、増加する一方の脳の病気(神経変性疾患)を、3年でも5年でも発病を遅らせられれば、快適で健康的な生活(健康寿命)が伸ばせることでしょう。そのためのカギは、特別ではありませんが、バランスのとれた健康的な食事と適度な運動にあります。



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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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