たかが便秘、されど便秘

今年の紅葉はきれいですね。秋の澄んだ高い青空をバックに色づいた木々を見ると、うっとりしますね。日本海側では、これから数か月にわたって、どんよりとした天候が続きますから、今日のような小春日和は貴重です。読書をしながら物思いにふけるもよし、秋は何をするにも絶好の機会ですね。先日、東京で行われた研究会で講師の中島央先生が言われた「邪魔なものを除くと自然に治ってゆく」は、サイコセラピーやカウンセリングだけでなく、身体の病気にも当てはまるように感じます。体質改善と言われる漢方医学は排泄の医学とも言われ、考え方や見方に共通している部分が多いのかもしれませんね。

先週から今週にかけて、新潟で1回、長岡で1回開催された便秘の学術講演会。新潟では順天堂大学の小林弘幸教授、長岡では横浜市立大学の中島淳教授から話を聞くことができました。とりあえず出すということでは刺激性下剤を使用すればいいので、習慣性や依存性などの問題があっても、安易に医療者も患者も刺激性下剤に頼ってきました。ただ、出すだけならそれでもいいかもしれませんが、長期的に考えると問題が少なくなく体系的に考える必要があるようです。

排便のメカニズムを考えると、生活リズム、食事の内容と量、排便姿勢、などが関係します。満足な排便を得るには、単に出すだけでなく、シッカリ出すことが重要になるのですね。私も改めて認識しました。

生活リズムは、朝の食事(胃結腸反射)と便意を感じた時にトイレに入る余裕が必要です。便意を無視(我慢)し続けると便意を感じなくなってきます。そうすると便が溜まった状態になり、さらに便秘が悪化するという悪循環に陥るのです。朝食を食べている人の方が朝食抜きの人よりも便秘が少ないとの報告もあります。朝のゆとりを生むには夜型のライフスタイルの見直しも必要になって来るでしょうね。

食事に関しては、線維でしっかり便の量を増やすことが基本です。水溶性繊維(海藻など)と不溶性繊維(野菜など)を両方摂る必要がありますが、不溶性繊維の摂り過ぎにより悪化する場合もありますから、気をつけたいものです。水溶性繊維を意識することが大事ですね。ヨーグルトや整腸剤に含まれる乳酸菌は、食物繊維が少ないと十分な働きができないとのことですから、繊維の摂取が少ない現状では意識的に摂ることが必要でしょう。また大匙1杯のオリーブ油もお勧めとのことです。

排便姿勢は、最近よく耳にするようになりました(私の不勉強かもしれませんが・・)。有名な「考える人」姿勢が理想。或いは和式トイレが最高です。肛門と直腸がまっすぐの方が、曲がっているより出やすいことは理解しやすいでしょう。まっすぐに近づける姿勢が、和式のしゃがむスタイルであり、考える人スタイルなのです。

運動やマッサージなどにより、外からの刺激で腸の運動を改善することも有効です。どんな運動でも、どんなマッサージでも構いません。とにかく腸を刺激さえすれば大丈夫です。

これらの生活の見直しだけでも、かなり便秘や排便にかかわる苦痛は改善されるはずです。その上で、満足度の高い排便を考えてみましょう。便の硬さや排便回数も重要になります。また、残便感(スッキリしない、残った感じがする・・)や腹部膨満感(腹が張って苦しい、ガスが多い・・)も対策があります。できるだけ詳しく様子を相談してみましょう。専門家なら、適切な対処法を提案してくれるはずですから。

ここまでくると、単純に刺激性下剤で済まそうとの考えはなくなるはずです。刺激性下剤は効果的で安価だというメリットがありますが、依存性や習慣性や耐性などのデメリットも大きいのです。線維や腸内細菌類の補充で刺激性下剤の使用量を減らすことができます。便の硬さは塩類下剤などを少量使うことで解決できますし、近年は病医院で処方される薬剤もあります。生活リズムの改善や運動に関しては、行動療法の視点を持つと効果的でしょう。

たかが便秘ですが、消化器専門医でも上手く便秘の診療をしている医師は少ないようです。体系的に学ぶ機会が少なかった事も大きく影響しているようですが、便秘学の奥深さを再認識した2週間でした。あなたの便秘、排便の悩み、誰に相談しますか?



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