風邪には、全て葛根湯?

いよいよ今年も残り30時間ほど。今年を総決算した結果は、いかがでしょうか?良いことも悪いこともあったでしょうね。
外は風が強くなってきています。明日は荒れるみたいですが、皆さん、無事に新しい年を迎えてください。来年もよろしくお願いいたします。

私は今年1年、「治ること、治すこと」や「健康を作る」ということを考えながら仕事や勉強をしてきました。「医療とは、自然治癒力を邪魔しないこと」と誰かが言っていたかと思いますが、自然治癒力を邪魔しないことって、とても難しいのかもしれません。良かれと思って提供する薬や治療が逆に苦しめることになってしまうことって珍しくないように思うのです。

でも、テレビの影響は大きく、またズバリ「この病気にはこれ!」みたいにハッキリものを言う人は視聴者受けもよく、結果的にテレビなどのマスコミから得られる情報は、わかりやすい言い切り型の(場合によってはオーバーな)表現になってしまいます。
先日来「葛根湯をくれ」という人が何人か来ました。なんでも某番組で出演したN医師が「風邪なら何でも葛根湯」らしい発言をしたと言うのです。確かに、葛根湯は使用頻度の高い漢方薬ですし、落語に登場する葛根湯医者のように多くの病気に使用できます。しかし・・・、葛根湯が合わない風邪だってあるわけですし・・・。

漢方で風邪などの感染症の対策をまとめた傷寒論という原典があります。そこには「7割の人が感染症で亡くなったから、これ(傷寒論)をまとめた」と序文に書いてあり、実に100種類以上の漢方薬が紹介されています。葛根湯は、その中の一つにすぎないわけですから、全てが葛根湯と言われると、その人の治る力を邪魔するケースが出てきます。

漢方薬は「体質で選ぶ」と言われ、体力・抵抗力もその目安となります。体力・抵抗力と言うことなら、葛根湯は「まだ十分な体力・抵抗力が残っている状態」に使う薬です。そう、充分に残っている体力・抵抗力を使って病気を治すのです。もし、体力・抵抗力が充分ないのに葛根湯を使ったら・・・・、弱っている馬にムチを打つがごとく、体力低下は加速するでしょう。漢方で「誤治」と言う医療ミスが起こりますが、「薬の副作用」「薬が合わなかった」などと片づけられることも多いのではないでしょうか?

漢方の基本を知らないと、平気でこのようなことを行うことになるのです。ひょっとしたら、何も飲まなかった方が早く良くなるのかもしれませんよね。「治る力」を活かすことって難しいと考えてきた1年間でした。何も飲まない場合に、治るまで5日かかるとしたら、その期間を3日にしたら「治した」ことになるのでしょう。5日なら「治った」です。
でも、5日かかっても「治った」と思わずに「治してもらった」と考えるなら、次回も同じ治療者の世話になるわけですね。現代の医療は、このような勘違いで医療資源を消費していると注意喚起している医師もいるのです。そして、現在のシステムは、腕のいい医療者・良心的な医療者が評価されにくいことも事実です。

「風邪を治す」時に、その人の体力・抵抗力レベルはどの程度なのか?そのレベルに合わせて、体力・抵抗力を使って病気を治すのか、体力・抵抗力を温存しながら病気を治すのか、それを見極めることが大切です。一般的に、体力・抵抗力レベルが高い時は高熱になりやすく、低い時は高熱にならずに微熱か無熱のことが多いので、目安にしてもらいたいのです。

熱が下がった時に、「治ってきた」と思う方が多いのですが、「治っている」場合と「体力・抵抗力が落ちて、熱を出せない」場合があることも知っておいてもらいたいことです。高齢者の肺炎で、高熱が出ない場合は、体力・抵抗力が落ちているからです。熱をむやみに下げない方が治りが早いのは、免疫システムが発熱とともに働いているからですよね。「発熱ができない=免疫システムが働けない」です。
私が、普段、風邪などの相談に対し準備している漢方薬は約40種類。最低でもこれだけの準備は必要だと考えています。ですから、風邪、則葛根湯と考えるなら、場合によっては「お金と体力・抵抗力と時間」を無駄に消費するだけかもしれません。「治る仕組み」をじっくり考えてみてはいかがでしょうか?

来年は、病気ごとにこの「治る仕組み」や「健康を作る仕組み(健康生成論)」をまとめてみたいと思っています。また、「体や心の痛み」をテーマに集中的?に勉強・研究してみたいと考えています。
今年1年、駄文をお読みいただいた皆様に感謝いたします。実り多い1年となりますことを願っています。


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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局
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