皮膚の痒みは、発生部位から治す

先週から大きなニュースが飛び込んできています。北朝鮮の核実験、スマップの解散?、スキーツアーバスの大惨事と、ジャンルは異なるものの世間に与える影響は大きいですよね。中でも若い命が多数犠牲になったツアーバス事故には、いろいろな問題が含まれています。バブル期を過ぎて不景気が長く続き、人口減少にもかかわらず大量消費を念頭に薄利多売に走った経営は、消費者には歓迎されるものの従業員の待遇に反映されず結果的に更なる値引きにつながって、いわゆるデフレスパイラルに陥ってしまいました。利益を削って価格を下げても数が売れれば利益は確保されますが、人口減の成熟社会では利益も上がらず、コストカットが至上命題となっています。今回のツアーバス事故も相当なコストカットが背景にはあるようで、そろそろ従来の資本経済による成長神話から脱却する必要があるのではないでしょうか?安くても質が保たれていれば、消費者は大歓迎ですが、今回のように質が低下して金銭に代えられない大切な命が失われたのであれば、元も子もありません。私達も「これで幸せになるのは誰か?」常に考えながら仕事をしたいと思います。亡くなった若い命のご冥福および関係される皆様の1日も早い平穏を願っています。

最近は薬を売っていても「この薬を売ることで幸せになるのは誰か?」と考えることが多くなりました。例えば風邪の相談では、あまり風邪薬を売らなくなりました。もちろん必要があれば売るのですが、解熱剤が必要なほどの発熱でなかったり、鼻炎症状が弱く抗ヒスタミン薬のデメリットが大きく感じられたり、咳症状が無いのに咳止めが入っていたり、・・・と薬の必要性が少ないケースが目立つのです。対応は、大きく2つ。一つは何も売らずに養生だけ説明してお帰り頂く(ひょっとしたらドラッグストアで買うかもしれませんが)、もう一つは栄養剤なり漢方薬なりを選択して体調を調える。

売らなければ利益は発生しませんし、開局しているコストだけがかかり返ってマイナスです。でも、例えば不必要な解熱剤は回復までの期間を延長し副作用の可能性も低くなくメリットが感じられないとしたら、誰が幸せになるでしょうか?少なくとも私は気持ちが穏やかではいられませんし、病人もコスト(お金)をかけて副作用のリスクを背負います。薬という物が動いたことでメーカーと問屋さんが幸せになります。まぁ、メーカーも薬の開発にかかる莫大な経費を産むためには売り上げが必要になってきますが、当薬局で考えることではありません。・・・と、こんな状態で毎日を過ごしています。

さて、皮膚の痒みを考えるとき、大雑把に言って、原因が皮膚にあるのか、内臓にあるのか、神経や脳にあるのか、などと思いを巡らします。原因のある部位によって使用する薬も違いますし効果の現れ方も変わって来るからです。しかも、原因に対応してない薬なら効かないだけでなく副作用の問題も出てきますし、病人に不必要な時間とお金を消費させることになるからです。だから、新しい知識を入れる必要がありますし、そのために各種の学会や研究会に参加するのです。この分の経費は当然価格に反映されますが、相談の質を保証するための必要経費と考えるか、無駄なコストと考えるか、は人それぞれでしょう。ただ、近年の医療界でも検査数値だけでなく質が重要だとの流れができつつあります。例えば骨粗鬆症では以前は《骨量》一辺倒でしたが最近は《骨質》も言われるようになっていますし、コレステロールも総コレステロールから悪玉コレステロールと善玉コレステロールに分けて考えるようになり、更に悪玉コレステロールでは超悪玉と言われる極小サイズの悪玉コレステロールや善玉コレステロールでは数値よりもコレステロール引き抜き能といわれる機能が注目されるようになってきています。

痒みの話に戻りますが、まず皮膚に原因があるときは、乾燥からくるものか炎症からくるものか寄生性生物(細菌・ウィルス・真菌・昆虫など)などに分けなければなりません。この区別がつかないで薬を選択すると逆に悪化させることもある位です。また皮膚に原因があっても、痒みの範囲や深さを考えないと外用薬だけで対応するのか内服まで必要なのかの判断もできません。薬が適切に選べても使用法が正しくないと治らないことになります。最近は使用量の目安としてのFTU(フィンガーチップユニット)が普及してきて使用量に関しては改善されてきている印象ですがまだ不充分です。

皮膚の乾燥に対しては、保湿剤の選定が重要です。ローションでいいか、クリームを使うのか、軟膏が必要なのか、など基剤も大切ですし、尿素を使うにしても濃度も問題です。サリチル酸を使うケースもありますし、組み合わせは無限に近くなりますから、その中で相談者の利益を考えて頭をフル回転させるのです。炎症が原因ならステロイドが中心になるのですが、ステロイドがどうしても使いたくないケースでは別の選択肢(植物製剤で抗炎症作用のある製剤)を準備します。寄生性生物では、その生物に対して必要な薬剤を選択することになります。

乾燥が広範囲のケースや皮膚の深い部分からの改善が必要な場合は、外用療法だけでは不十分ですから内服薬も使用します。これは、一時的にでも使用する方が良いかと思います。早く痒みを解消するためには、病気の勢いを削ぐ必要があり、場合によっては内服薬は非常に効果的なのです。一般的には抗ヒスタミン薬を使用しますが、ビタミン剤や栄養剤などが効果的なケースもあり、ケースバイケースとしか言いようがありません。抗ヒスタミン薬にしても副作用の出やすい第1世代と云われるものから最近は副作用の少ない第2世代の抗ヒスタミン薬に変わってきています。若干価格は高くなりますが、第1世代の抗ヒスタミン薬で副作用の眠気による事故も珍しくないことから私は第2世代の抗ヒスタミン薬をお勧めしています。

内臓にある場合は、肝臓や腎臓の疾患のことが多いのですが、ガンなどの悪性腫瘍も考慮しながら相談に乗ることになります。そして適切に専門医への紹介が重要になりますし、チェックを怠って抗ヒスタミン薬で対症的に痒みだけを抑えるなら、医療者としての適性に疑問が残ります。正式な医学教育を受けてない薬剤師でも最低限のチェックができないと健康相談機関として認知されないでしょうから、きちんとした対応ができるよう知識の吸収には貪欲にならざるを得ません。

脳や神経が痒みの発生源なら、新しい薬でそれなりに薬剤があるようですが、保険で使えるとはいえかなり高価な薬剤で、使用に条件があります。また、私の専門の分野ですが、痒みを正しく認知してないケース(本来の痒みの強さよりも本人が増強して痒みを感じてないようなケース)では、時間をかけて心理療法も行うことがあります。”痛み”に関しては破局的思考という視方は有名ですが、”痒み”にも破局的思考はありますし、そのように対応しないとドクターショッピングを繰り返すことになります。この場合に適切な対策がなされると、本来の痒みの感じ方になりますので、薬が効きやすくなるのです。

無駄にあれこれ薬を使うのではなく、きちんと原因や発生部位を考察して適切な対応をとることが、その方の幸せ作りにつながってゆきます。「商売っ気が無い」ともよく言われますが、私が提供するのは医療サービスであり物としての薬ではありません。出来る限りこのスタンスを通したいと考えています。



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新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局
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