治せないアトピー性皮膚炎に挑む

今日から3月です。当地では、暖冬だったものの未曾有の大雪が降ったり、未だに雪が舞ったりと今一つ春らしくなってくれません。学会や研究会で関東方面に出かければ梅の花が満開になっているのに、こっちはまだまだですね。その代り、暖かくなれば一気にいろんな花が咲きだします。長く愛でるもよし、濃縮された時間を楽しむも良し、です。

当薬局で私が特に力を入れている分野は、漢方相談・心理相談・皮膚病相談の三つです。生活習慣病や婦人科疾患や風邪や膀胱炎などの感染症、その他一般的な相談も普通以上に行ってますが、先の三つの相談に比べれば深さが異なります。だから、「任せてください!」というレベルになれるよう日々頑張ってるわけです。

そこで5、6年前から参加するようになったのが今回出席した”アトピー性皮膚炎治療研究会”です。皮膚科領域の心身症を研究する”皮膚科心身医学会”と合同開催されることも多いのですが、今回は独立開催で1日半にわたり難しいレベルのアトピー性皮膚炎に対する工夫に触れてきました。例えば漢方を勉強している方なら、アトピー性皮膚炎に対して漢方的な視点で対応されるでしょうし、実際に漢方薬で改善するケースも多くあります。また心身医療を勉強している方なら、アトピー性皮膚炎に対しカウンセリングや心理療法で心をほぐし皮膚の回復を助けることでしょう。

幸いにも私は両方勉強する機会に恵まれたので、アトピー性皮膚炎に対して漢方薬と心理テクニックを駆使して相談に当たることができます。ただ、漢方薬で回復するケースを見ていて気づくのは、アトピー性皮膚炎には色々なタイプが存在しており、そのために様々なレベルでの《治りにくい》があるのです。ガイドラインでは基本的に、FTUを基準にしたステロイド外用薬の使用と皮膚炎が見かけ上消失してからも間欠的に使用するプロアクティブ療法が推奨され、実際に忠実に実行すれば今まで治らなかったアトピー性皮膚炎の多くで皮膚炎のコントロールが可能になってきました。その一方で、これでも治らないアトピー性皮膚炎が目立つようになってきています。

ステロイド外用薬でコントロールができないケースには、一般的に免疫抑制剤の服用が行なわれます。免疫学の進歩と共に免疫抑制剤の種類も増えアトピー性皮膚炎に焦点を当てた免疫学的治療も可能な時代になってきています。しかし免疫抑制に関しては、副作用等まだまだ未解明な部分も多く存在しますから今後の研究の発展が望まれます。

今回の研究会で印象に残ったことはたくさんありますが、やはり現代皮膚科学的には適切な強さのステロイド外用薬をしっかり使用することが重要だと言うことです。ステロイド外用に関しては一部副作用から反対される専門家もいますが、その副作用を抑えるような使用法を徹底することも大切でしょう。事務局の片岡葉子先生が云うところの”タイトコントロール”がポイントで「1ヶ月で正常レベルにすることが大事」なのです。片岡先生の考え方は、ステロイド外用薬の効果を最大限引き出し副作用を抑え込む、見事な方法だと私は感じています。ただ、研究会で片岡先生も言ってましたが、「名ばかりのタイトコントロールも多く行われている」と。名ばかりだから、治りきらなかったり再発したりするケースが後を絶たないとも。残念なことです。

そして当薬局には様々な理由で、ステロイド外用薬を使用しない方・使用できない方が訪れます。そのような方に対して、当薬局で出来ることは何でしょうか?薬局で使用できるステロイドは中ランクの強さですから、きちんと説明してステロイド使用に納得しても、FTUを理解させてタイトコントロールを目指しても限界があります。漢方薬や心理テクニックは更に磨きをかけることはもちろんですが、もっと根本的なことを考えると、食事・栄養や生活リズム・睡眠の質、姿勢や呼吸、腸内環境、運動や入浴法による代謝や発汗の正常化、などなど当たり前すぎて疎かにしていることが非常に重要だと再認識しました。

一番印象に残っているのは、正常で強力な皮膚バリアを形成する”汗”の重要さです。大阪大学の室田浩之先生は発汗指導により改善したケースを報告され、杏林大学の塩原哲夫教授はスキンケアや入浴により正常な発汗機能を回復させてアトピー性皮膚炎を改善させることを講演で話されました。ステロイド外用や免疫療法は、漢方的な視点からは標治(対症療法的)に該当し、スキンケアなど生活指導は本治(根本療法的)に該当すると考えられます。より自然で再発しにくい方法として、今回の発汗機能に注目することは非常に重要かと思いました。

健康な皮膚の状態・機能を念頭に置いて、丁寧に説明し持ってる技術を駆使すれば、強力な治療法を有しない薬局の相談においても、相当な”治らないアトピー性皮膚炎”でも対応できるような気がします。本来は、全ての皮膚科医がマスターすればいいことなのでしょうが、今回の研究会では長岡の皮膚科医は残念ながら出席されてなかったようです。名ばかりのタイトコントロールが無くなる日が1日でも早く訪れることを願っています。

この他にも、アトピー性皮膚炎の状態を反映するTARC検査の意義と重要性、アトピー性皮膚炎と紛らわしい皮膚がんの菌状息肉症やセザリー症候群の特徴、食物アレルギーとの関係、など多くの知識を得られた研究会になりました。



漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー)
http://hirohashi-pharma.sakura.ne.jp/ (アドレスを変更しました)

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