胃腸疾患に脳・心理からのアプローチ

久々の雨が降っています。関東甲信まで梅雨入りしたものの、いつも新潟県はワンテンポ遅れての梅雨入りなので、いよいよ入梅かもしれません。5〜7月は学会の開催が比較的多い時期ですが、出来れば雨に当たりたくありません。その意味では先週末、仙台で行われた日本心身医学会は暑からず寒からずで、とても快適に過ごせた学会でした。

さて、東洋医学では、皮膚病に対して胃腸を調える漢方薬で効果的なことがあり、不妊症が胃腸を調えて妊娠に至ることがあり、アレルギー体質の改善に胃腸を調えることもあり、感染症の予防や改善に胃腸を調える場合もあり、・・・・など、胃腸の働きを調えることは全身のバランスを改善する基本になるとの考え方をします。でも、ストレス社会の現代は、食欲不振・胃食道逆流症・胸焼け・ゲップ・胃もたれ摂食障害・消化不良・腹部膨満感・慢性下痢症・便秘症・過敏性腸症候群など、胃腸の働きが乱れた多数の病気が起こりやすい環境にあります。

今回の日本心身医学会に招待されたウィリアム・ホワイトヘッド博士(ノースカロライナ大学教授)の特別講演は、過敏性腸症候群の治療に催眠療法認知行動療法など心理療法の有効性と推奨度を示され、改めて過敏性腸症候群と脳機能・メンタルヘルスとの関係を再認識しました(と言っても、英語の講演でしたから断片的にしか理解できてないのです・・・残念!)。

別のシンポジウムでも「摂食障害患者は、食べる・食べないの結果としての『体重だけを見ないでほしい』と述べている」など、表面的な症状や身体変化に注目するだけでは治療は上手く行かないとの報告もありました。
客観化しやすく効果を確認しやすい身体の症状に焦点を当て、重篤な疾患を見逃していないかチェックするのは医療人として必要なことですが、それだけでは治り難いストレス病としての胃腸疾患が増えているのでしょう。

東洋医学では、思い悩んだり心配したりすることと胃腸疾患は関連するとの視方があります。もともと身体と心(脳)を切り離せないものとして考える漢方では、悩みや不安を聞きながら胃腸への影響を考え、同時にカウンセリングをしているような面接になります。漢方薬が胃腸疾患と相性が良いのはこのような理由があると思います。もちろん漢方薬を飲んでも、悩みや不安が解消するわけではありませんが、身体に対する悪影響を軽減することで心理面での変化(あるいは脳機能の変化)が得られているように感じます。

そして、ホワイトヘッド博士が述べた心理療法の活用により、患者さんの薬に対する依存心を和らげ、自然な回復力を発揮させることで自己効力感を伸ばすことにもつながることでしょう。自分でコントロールできない病気・症状は大きなストレスになりますが、症状をゼロに出来なくてもある程度コントロールできるとの思いは、社会生活にも好影響を与えるはずです。

博士が講演で述べた催眠療法は治療者を必要とするのですが、催眠から進化してきた自律訓練法は治療者を必要とせず一人でどこでも行えることから多くの方が身につけられると医療費の削減に有効なのではないかなぁと思い、当薬局では自律訓練法の指導に取り組んでいます。認知行動療法もセルフで実施できるノート形式の練習本もありますし、いろいろなストレス対処のスキルをアドバイスしながら、脳・心理面からのアプローチも意識して、薬の使用を最少で済むように研鑽してゆこうと思います。




漢方薬心療内科相談・心理カウンセリング・皮膚科の病気・生活習慣病不妊
新潟県長岡市 相談薬局 ひろはし薬局   廣橋義和(薬剤師・心理カウンセラー・新潟薬科大学臨床教授)
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